目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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      七歳の記憶炎天から焼夷弾   水戸市  中崎 正紀

ぎこちない調べだが記憶そのまま。先月、仲代達也氏の戦慄的な思い出を聞いた。空襲の時家族にはぐれた少女の手を引き一緒に探していると焼夷(しょうい)弾に直撃され、少女は手首だけになっていた、と。       【 矢島 渚男 選 】


      咲ける間は田圃に入らず稲の花   伊丹市  奥本 七朗

花の時期は田圃(たんぼ)に入らないのか。そう聞けば神聖な気のする稲の開花。食べはしても、作れない身にはわからないことである。あの小さな一花一花が、一粒一粒のお米に。                         【 正木 ゆう子 選 】


      鰻焼く元ボクサーの店主かな   津布久  勇

元ボクサーというところから、鍛え抜いた体、きびきびとした動きが、想像される。おいしい鰻(うなぎ)が出てくるのではないでしょうか。ボクサーをやめてから10年経(た)つくらいか。                           【 小澤  實 選 】


    蝉時雨、花火大会、甲子園、遠くの音を聴くだけの夏
                              狭山市  えんどうけいこ

上の句、賑(にぎ)やかで華やかな 夏の風物詩かと思いきや、 明かされる三つの共通点に、はっとさせられる。「聴く」という漢字からは、耳を澄ませ、想像をしていることが伝わってくる。 手ざわりの希薄な夏の寂しさ。        【 俵  万智 選 】


      八月の涙はいつも涸れてゐる   高松市  島田 章平

8月の悲しみに流す涙は、もう流し尽くして涸(か)れてしまった、と解釈した。自分というより、テレビ等で人を見てそう思ったのか。戦争と原爆を念頭に解釈すべき句だろう。                                【 正木 ゆう子 選 】


      迎えるも送るも一人門火焚く   旭 市 神成田 桂子  

盆に帰ってくる子もなく 一人で門火を焚(た)き送り火を焚く。 こうした家が多くなっている。淋(さび)しいことだが、 盆行事を欠かさない習慣が嬉(うれ)しい。 これは先祖を崇(あが)める太古からの素朴な民俗行事である。   【 矢島 渚男 選 】


      蓮の花散りておのれを解体す   小島 一慶 ( こじま いっけい )

蓮(はす)の花がみごとな盛りをすぎて、散りはじめる。花びらが開ききって、もはや閉じる力がなくなる。やがてひとひらずつ花から外れ、水の上に散らばる。無残にして華麗な自分の始末のつけ方。句集 『入口のやうに出口のやうに』 から。
                      【 '19.09.06 四季 ・ 長谷川 櫂 選 】 


      ふるさとの十五は大人祭笛   堺 市  重親 利行

この少年には昔の作者の姿も重なっているだろう。土に根ざした15歳は、立派な働き手。自然は、子供を早く大人にしてくれる。       【 正木 ゆう子 選 】


      ごきぶりや読経続ける通夜の席   川崎市  西  順子

僧の読経が続く通夜の席に、ごきぶりが出てきてしまった。たたきつぶすわけにもいかない。ごきぶりの生が、死者の死をきわだたす。         【 小澤  實 選 】


夏休み東京タワーの頂上で孫が見る令和我が見る昭和
                          町田市   永井 悦子

東京タワーから眺める街並。孫が見ているのは現在の東京だが、作者はそこにいつしか昭和の日々を重ねている。初めてタワーに行った日の記憶なのかもしれない。
                                    【 栗木 京子 選 】


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