目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
雪囲い男結びの手の記憶 酒田市 佐藤 豊光
大掛かりな冬支度である。雪囲いの要所要所を縄で結ぶ。年に一度のことであるのに手が手順を覚えている。洗練された風土詠だ。 【 宇多 喜代子 選 】
大掛かりな冬支度である。雪囲いの要所要所を縄で結ぶ。年に一度のことであるのに手が手順を覚えている。洗練された風土詠だ。 【 宇多 喜代子 選 】
小春日を妻の歩幅で歩きけり 神奈川県 中村 昌男
妻の足はおそく、ともに歩く身にはもどかしいところ。読む者みんなに「いい御夫婦だなあ」と感じさせる。そう感じさせるのは夫たる作者の優しさと、「小春日」。
【 宇多 喜代子 選 】
妻の足はおそく、ともに歩く身にはもどかしいところ。読む者みんなに「いい御夫婦だなあ」と感じさせる。そう感じさせるのは夫たる作者の優しさと、「小春日」。
【 宇多 喜代子 選 】
55階新宿に雪落ちてゆく 小田原市 北見 鳩彦
高層ビルから、眼下の街へと落下する雪を見下ろしている。作者の居る空中は、新宿であって新宿でない。 【 正木 ゆう子 選 】
高層ビルから、眼下の街へと落下する雪を見下ろしている。作者の居る空中は、新宿であって新宿でない。 【 正木 ゆう子 選 】
駅を出て一人に一つ冬の月 柏市 藤嶋 務
お勤めからの帰りだろう。 幾人かが下車して駅の外に出る。 それまでの不思議な連帯からそれて一人になる。 そんな感慨を抱き、それぞれの帰路につく。
【 宇多 喜代子 選 】
お勤めからの帰りだろう。 幾人かが下車して駅の外に出る。 それまでの不思議な連帯からそれて一人になる。 そんな感慨を抱き、それぞれの帰路につく。
【 宇多 喜代子 選 】
曖昧なものは脱ぎ捨て冬木立 東京都 藤田 柾子
多くの葉が枯れ落ち、少しばかり残った木々の葉。落ちそうで落ちない。暮れ方の残照。まだ少しあたりのものが見える。ああ、曖昧。 【 宇多 喜代子 選 】
多くの葉が枯れ落ち、少しばかり残った木々の葉。落ちそうで落ちない。暮れ方の残照。まだ少しあたりのものが見える。ああ、曖昧。 【 宇多 喜代子 選 】
山藤の実の弾けたる音と言ふ 大阪府 池田 寿夫
何の音?という疑問に、側の人が答えたのか。山には山の音がある。私も山中の怪音を、栃の実の落ちる音と教えられた事がある。 【 正木 ゆう子 選 】
何の音?という疑問に、側の人が答えたのか。山には山の音がある。私も山中の怪音を、栃の実の落ちる音と教えられた事がある。 【 正木 ゆう子 選 】
浴場にいるのはみんな老人で私も少し老人である
神戸市 安川 修司
他人のことは容赦なく的確に判断できるのに、自分のことは、なかなか見えない。「少し」に込めた諧謔(かいぎゃく)が光る。 【 俵 万智 選 】
神戸市 安川 修司
他人のことは容赦なく的確に判断できるのに、自分のことは、なかなか見えない。「少し」に込めた諧謔(かいぎゃく)が光る。 【 俵 万智 選 】
散る紅葉古い手紙は燃やさうよ 東京都 山内 健治
本当に。 少しはモノを整理しなくては。 そうは言っても捨てられない手紙の数々。読み返すこともないのに、決心がつかない。 【 正木 ゆう子 選 】
本当に。 少しはモノを整理しなくては。 そうは言っても捨てられない手紙の数々。読み返すこともないのに、決心がつかない。 【 正木 ゆう子 選 】
鮭遡上みな故郷へ傷を持ち 流山市 久我 渓霞
鮭たちは子孫を故郷の川に残すために懸命に遡上(そじょう)する。「傷を持ち」に、なんとなく人間が重なるところが切ない。 【 矢島 渚男 選 】
鮭たちは子孫を故郷の川に残すために懸命に遡上(そじょう)する。「傷を持ち」に、なんとなく人間が重なるところが切ない。 【 矢島 渚男 選 】
病室の深夜放送にきこえくる「麦と兵隊」のしらべかなしき
松戸市 関根 賢人
『麦と兵隊』は火野正葦平(あしへい)が昭和13年、中国戦線に従軍して書いた小説。 歌は東海林(しょうじ)太郎が歌って広く愛誦(あいしょう)された。 当時の人には忘れ得ぬ作品である。
高千穂より桜島かけて降りうつる草屋(くさや)の雨に身はぬれてをり
霧島市 久野 茂樹
上の句は、大きな状景と古代史的な印象の地名をとりこんだ表現に力があり、下の句で一転して、こまやかな情緒が生きる。
貧乏は恥づかしくないと母は言ひて長くわづらひし父を看とれり
横浜市 小池 四郎
余所者の口出しせぬが無難なりつどひさびしき転入者われら
山口市 岡田 貞義
いささかの遺産めぐりていさかへりもの言わぬ義母の曲がりし背中
久留米市 塩山 雅之
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いずれも、今回の【 岡野 弘彦 選 】の作品です(10作品中5作品)。
「五七五七七」のリズムにこだわらない作品が目に付くのですが、如何でしょうか?
松戸市 関根 賢人
『麦と兵隊』は火野正葦平(あしへい)が昭和13年、中国戦線に従軍して書いた小説。 歌は東海林(しょうじ)太郎が歌って広く愛誦(あいしょう)された。 当時の人には忘れ得ぬ作品である。
高千穂より桜島かけて降りうつる草屋(くさや)の雨に身はぬれてをり
霧島市 久野 茂樹
上の句は、大きな状景と古代史的な印象の地名をとりこんだ表現に力があり、下の句で一転して、こまやかな情緒が生きる。
貧乏は恥づかしくないと母は言ひて長くわづらひし父を看とれり
横浜市 小池 四郎
余所者の口出しせぬが無難なりつどひさびしき転入者われら
山口市 岡田 貞義
いささかの遺産めぐりていさかへりもの言わぬ義母の曲がりし背中
久留米市 塩山 雅之
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いずれも、今回の【 岡野 弘彦 選 】の作品です(10作品中5作品)。
「五七五七七」のリズムにこだわらない作品が目に付くのですが、如何でしょうか?