目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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父か母か蝶よそれとも弟か   上尾市  山田 正雄

ときに春の蝶(ちょう)や夏の揚羽(あげは)が人恋しさを感じさせながら付きまとうことがある。私はそんな時、あなたは誰なのと声に出す。山田さんも同じなのだろう。
                                  【 宇多 喜代子 選 】


       死にかけのごきぶりおもひきりたたく   松山市  久保  栞

無惨のように見えるが、このようにとどめをささないと、ごきぶりはしっかりと生き返って、十倍百倍になって、戻ってくることになる。まさに非情の詩だが、真実だ。
                                     【 小澤  實 選 】 


      あの世でもこの世でもなし亀が鳴く   横浜市  本多 豊明

もとより亀は鳴かない。長閑(のどか)な春をいう文芸的な比喩なのだが、その長閑さをあの世かこの世かわからないぐらいだというところに重ね、長閑な春の日を強調した句。                              【 宇多 喜代子 選 】


      伊吹山までさざなみの麦の秋   吹田市  前田 尚夫

麦畠のさざなみが伊吹山まで続いている大きな風景である。 「の」を「や」にしてみたらどうだろう。琵琶湖のさざ波まで見えて来ないか。切字の働きである。 
                                     【 矢島 渚男 選 】,


シースルーエレベーターは少人数それでも街は動き始めた
                             静岡市  柴田 和彦

緊急事態宣言が解除され、街は少しずつ動き始めた。 密集を防ぐためエレベーターに乗る人数はまだ制限されているが、人の姿を見ると安堵(あんど)する。    下句の思いは深い。                        【 栗木 京子 選 】 


取り置きし桜模様のハンカチで宇野千代好みのマスクを作る
                             東京都  亀井 枝美

百歳近くまで華やかに活躍した作家の宇野千代氏。デザイナーとしても知られる。桜模様のマスクは活力を与えてくれそうだ。           【 栗木 京子 選 】 


      古希といふ中途半端な夏帽子   東京都  関戸 まもる

最近は「アラ古希」という言葉もあるらしく、私もその一人。若くはないが、老人というほどの落ち着きもなく、まことに中途半端です。         【 正木 ゆう子 選 】


    閉店せし老舗デパートの思い出はお子様ランチの日の丸の旗
                            新潟市  古泉 浩子

昔デパートには必ず大きな食堂があった。そこで食べるのが子どもの最高の楽しみだった。定番のお子様ランチ。チキンライスに小さな日の丸が立っている。ああ懐かしい。                                  【 小池  光 選 】
 


      この国を褒めたことなしパナマ帽   栃木県  あらゐひとし

欧米生活が長かったパナマ帽の人。 「喉もと過ぎれば熱さ忘れる」 「臭いものに蓋」 「長いものには巻かれろ」 など、封建時代の諺(ことわざ)が いまも通用する国民性を貶(けな)してばかり。                          【 矢島 渚男 選 】,


      母の日の生きててよかったとう電話   下田市  森本 幸平

母の日に電話がかかってきて、「生きててよかった」と言われたというのだ。この言葉を発したには、母君か。省略がゆかしい。             【 小澤  實 選 】 


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