目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   風花や青空の舞ひはじめたる   古賀 しぐれ

風花が舞いはじめた。見上げると雪片のすき間の青空も舞っているように見える。空が舞うとは新鮮で面白いとらえ方ではないか。「青空に舞ひはじめたる」なら全くの「ただごと俳句」。「の」の一字に天地をひっくり返す力がある。
                          【 四季 ・ 長谷川  櫂 選 】

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‘「の」の一字に天地をひっくり返す力がある’ と力強く断言されていますが、この解釈は正しいのでしょうか? 私には著者が言う「ただごと俳句」的解釈のほうが自然なように思えます(この作品が「ただごと俳句」と思っているわけではありません、念のため・・・)。 そのための「切れ字」では・・・?
 「風花に青空の舞ひはじめたる」 との違いは、どう説明されますか?



   水仙のそこここに混みあつて咲く   水戸市  幡谷 耕三

水仙の咲き方はまさにこの通りという写生句。欲のない写生句は、作るにも読むにも安らぎを覚えるもの。今年も大いに試みたい。 【 正木 ゆう子 選 】


   下手な字で心つたわる年賀状   山形市 三部 ヒロ

たとえ下手でも手書きの賀状は嬉しい。 もしや「つたえる」では? 一字で相手と自分が入れ替わる。               【 矢島 渚男 選 】


  豊かとは言ひ難かりしわが胸の手術の跡の冷えにとまどふ
                         横浜市  坂口 千鶴子

豊かとは言えなくても乳房にはどこか温もりがある。 手術を受けて、初めてそのことに作者は気付いた。心と身体の両面で病を受けとめようとする思いの伝わる一首。                      【 栗木 京子 選 】



   瓢箪のくびれうらやむ糸瓜かな   千葉県  菅谷 貞夫

「次々と悲運の鯊(はぜ)の釣られけり」(斉藤あきら)、「頭から靴の中まで大夕立(ゆだち)」(福田澄子)など、たくさんの候補の中からこの句を選んだ。 糸瓜(へちま)が胴のくびれた瓢箪(ひょうたん)を羨んでいると悠揚と自然を詠いながら人間の世相への風刺でもあって愉快。
現代の俳句に失われがちな俳諧味がある。      【 矢島 渚男 選 】

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   五月闇一時帰宅の沙汰を待つ   福島県  渡部  健  

「沙汰」がなければ帰宅することも叶(かな)」わず、ひたすら一時帰宅の許される日を待つ。そんな日の鬱々(うつうつ)たる心中が「五月闇」に暗示される。投句当時、作者は仮設住宅にお住まいだった。それだけの情報から推察しての鑑賞となるが、不如意な日のあるときの切迫した気持ちが、そのまま表現されており、忘れがたい一句となった。    
【 宇多 喜代子 選 】

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   返り花ふと名案の浮かぶごと   東京都  杉中 元敏

思案している最中には良い考えが浮かばなかったのに、忘れたころになって ふとアイデアが浮かぶことは確かにある。返り花を全く新しく捉え直した比喩である。様々な出来事のあった年。しかし年間賞には明るい句を選ぶことにしよう。次の時代に向けて、たくさんの名案が浮かびますように。
                               【 正木 ゆう子 選 】

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   外来魚帰化植物も春を待つ   東京都  望月 清彦

外来魚の代表といえば、ブラックバス。帰化植物はセイタカアワダチソウ。  どちらも生態系を壊すとして、嫌われているものである。ただ、外来魚も帰化植物もわれわれとともに生きているいのちであることは、たしかである。作者はそれらに温かな目を向ける。いのちの前にいっさいを差別しない。その姿勢に深く感銘を受けた。                     【 小澤   實 選 】



【 天皇陛下 】
 津波来(こ)し時の岸辺は如何なりし見下ろす海は青く静まる

【 皇后さま 】
 帰り来るを立ちて待てるに季(とき)のなく岸という文字を歳時記に見ず

【 皇太子さま 】
 朝まだき十和田湖岸におりたてばはるかに黒き八甲田見ゆ

【 皇太子妃雅子さま 】
 春あさき林あゆめば仁田沼の岸辺に群れてみづばせう咲く

【 常陸宮妃華子さま 】
 被災地の復興ねがひ東北の岸辺に花火はじまらむとす

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今年の「歌会始」、華子さまの作品がいちばん優れていると思いました。
皇太子さまは、「八甲田」の方に目がいっているように思えるのですが・・・。



   もの言はず一日(ひとひ)書の中雪の中   佐々木 国広

冬は寂しい季節と思われているが、そんなことはない。冬ごもりの喜びというものがある。この句のように雪の降るなか一日中、家にこもって本の世界に遊ぶのは、はたからみればつまらなそうだが、ご本人は楽しいのだ。琵琶湖 東岸の人。                   【 四季 ・ 長谷川  櫂 選 】



   初夢の良寛さまと毬をつく   糸魚川市  猪又 久子

こどもの頃からよく聞いてきた良寛さんがまさかのこと初夢に出てきて一緒に手毬(まり)を着いてくれた。越後の人らしい初夢である。 【矢島 渚男 選】



  つれづれに魑魅魍魎と書いてみるわが身にも棲む鬼の四匹
                          仙台市  田中 勢津

字だけ見ていてもおどろおどろしい思いの迫ってくる「ちみもうりょう」、口でつぶやいてもやはり背筋がぞっとする。            【 岡野 弘彦 選 】


   達筆の余白も美(は)しき寒見舞   八王子市  村上 義一

なにもかもが印字で処理されるようになった今どき、このような、字も余白も美しい「寒見舞」を手にすることも少なくなった。 そんな見舞状への愛惜が伝わる句。                       【 宇多 喜代子 選 】



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