目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   若者の歩幅の残る春の雪    千葉市  中村 重雄

春になってからの雪が淡く積もっている。誰かが足跡をつけている。歩幅からしてどうやら若者のようだ。がっしりした体躯の若者を彷彿とさせる句。 
                             【 宇多 喜代子 選 】


  同居する孫に手紙を出しにけり2の五つ並ぶ消印のため
                 千葉県・匝瑳(そうさ)市  椎名 昭雄 
平成22年2月22日の消印には「2」が五つ並ぶ。 記念すべき日なのだ。孫の喜ぶ顔が見たくてわざわざ手紙を出した作者。「同居する孫に」がいっそう楽しい。                         【 栗木 京子 選 】


     石仏の簡単な顔桃の花     谷 雄介

仏様の顔は簡単である。というのは、複雑な顔はたいてい悩みを抱えている顔だから、人々に安心を与え、救いをもたらすことができない。悩みを一つずつ取り除いてゆけば顔は簡単になる。そんな仏の顔が桃の花に照り映えている。                          【 四季 ・ 長谷川 櫂 】


images3.jpg文化庁は12日、2009年度の芸術選奨文部科学大臣賞と同新人賞の受賞者を発表した。 文部科学大臣賞には、音楽家の坂本龍一さん(58)、評論家の西部邁さん(70)ら19人が選ばれた。

西部 邁(にしべ・すすむ)   評論家 1939年、北海道生まれ。
東大大学院経済学研究科修士課程修了。横浜国大助教授、東大助教授を経て同教授となるも、49歳で辞任。1994~2005年、月刊オピニオン誌「発言者」刊行。05年創刊の隔月刊誌「表現者」の顧問を務める。近著は「妻と僕」。

【不屈のひみつ】 「しゃべれるか」壇上で賭け 
(9月16日) 
 学生時代は60年安保闘争の先頭に立ち、その後は保守思想を掲げて言論界をリード。1988年に人事問題のこじれで東大教授を辞め、今年は妻・満智子さんのがんを著書で明らかにした。しばしば世を驚かせてきたが、「僕の人生は30歳過ぎまで浮いたり沈んだりの人生だったけれども、その後はたんたんとしたものだよ」と振り返る。

 最初の落ち込みは5歳のころ。札幌近郊に育つが、「冬になると木枯らしが吹いて気持ちが荒涼とする。にぎやかになると思って、自分の家に火を付けたんだ」。幸い、祖母が障子の火を消して事なきを得たが、これがケンカと非行に彩られた吃音(きつおん)少年の“デビュー”だった。

 小学校ではケンカばかりしていた。俊足で運動会の徒競走はいつも1番。「英雄時代だった」が、4年生の時に足をねんざし、哀れヒーローは表舞台を去った。中学校に入ると非行に走り、万引き少年に。1年後には「不安になって」やめたが、ケンカっ早さは変わらなかった。勉強もケンカ腰だった。高1の1年間で3年分の勉強を終えていた。

 高2の夏、人生最大の落ち込みを経験する。妹を乗せた自転車を運転中に荷車と衝突。妹は内臓破裂の重傷で生死をさまよった。以来、「吃音が悪化し、全く口をきかず、何も読まない無気力症になった。それが高校卒業まで続いた」という。

 1浪して東大に入り、学生運動を始めるが、理由がまた尋常でなかった。「犯罪者になってみたかったんだ」。左翼の何たるかも知らないままブント(共産主義者同盟)に加わり、1年ほどガリ版刷りに精を出した。

 大学2年の秋、転機が訪れる。東京の日比谷野外音楽堂で演説予定者が登壇できなくなり、突然「代わりにお前が話せ」と言われた。「一瞬のうちに心の中で賭け事をやったんだ。ここでしゃべれなければ一生しゃべれないだろうし、しゃべれれば一人前の人間になれると」。そして壇上に立つと、幾らでもしゃべれた。物心ついて以来の吃音が、治ってしまった。

 その後も起伏は収まらない。翌年には逮捕・拘置。11月に保釈され、左翼との決別も決心したが、待っていたのは貧困と飢えだった。結婚しても人生の目的を見いだせず、酒とバクチに費やす日々。連合赤軍事件で目の当たりにした左翼の末路に衝撃を受け、ようやく猛勉強。保守思想を身につけ始めて心の安定を見いだした時は、すでに30歳をだいぶ過ぎていた。

 その後の人生については、こう語る。「東大を辞めるのなんて何でもなかった。妻のがんも来るものが来たというだけのこと。僕はあと、折れ線グラフが折れるように死ぬだけだよ」                    ( 植田 滋 )


   白魚汲む婆4,5人が遊ぶごと     細川 加賀

「白魚汲(く)む」とは白魚漁のこと。 産卵のため河口に集まる白魚を舟で待ち構えて掬(すく)いとる。この句、おばあさんたちが白魚を汲んでいるところだが、相手もはかない白魚なので遊んでいるようでもある。 子ども同様、これも無我の境地。                 【 四季 ・ 長谷川 櫂 】



今週の特選句
   ボタン付けひとり暮らしに腹を立て ( 三重県 中村 義風 62歳 )
     イライラして怪我しないでよ。特選。


ほかに、
  暇だからボタンみな押すエレベーター ( 静岡県 岩田 喜江 64歳 )
     やめなよ。
 
 
 捨てられぬ顔も忘れた第2ボタン   ( 栃木県 とんとろ 35歳 )
     第2ボタンばっか集めすぎなんだよ。
  
  無印にブランドボタン付け替える ( 埼玉県 ジョージ西川口 65歳 )
     そういうとこだけマメなんだね。

  ファスナーで良かったあぶなく洩らすとこ (東京都 不老長寿 61歳 )
     でもファスナーは、はさむよ。痛ぇよアレ。


   ぶらんこにパンツ丸見えなど平気   町田市  枝沢 聖文

ぶらんこは春の季語。スカートをはいた小さな女の子が乗っている。勢いよく漕ぐので、パンツ丸見え状態になってしまう。でも気にしない。今、ブランコに夢中なのだ。                        【 小澤  實 選 】


 血縁の故に結ばれざりし君老いてなほわが幼名呼べり
                          川崎市  大同きみゑ  
 
結ばれることはなかったが絆は変わらず続いている。一篇の物語を読むような静かな余韻の残る歌。 「幼名(をさな な)呼べり」が趣深い。
                              【 栗木 京子 選 】


 8日 金貸せば金と友人を失う
 9日 たとえ安くても現在に必要のない物は買うな
10日 今日出来る事を明日に延ばすな
11日 口と財布は締めるが得
12日 愚痴はいかに高尚な内容でも、またいかなる理由であっても、
     けっして役にはたたない
13日 口に蜜あり腹に剣あり
14日 諦めは心の養生


「未完」の語は、「完成」の反対語だが、思想性の高い語彙である。何故なら宇宙も神も完成しておらず、完成することなく終焉(しゅうえん)を迎えるからである。いわば初めもなく終わりもない。これは事実である。「脳」の存在も、人間が指向する限り進化し、死をもって終わるが、人間そのものは常に未完で終わる。人間も、宇宙も、神仏も未完成の存在なのだ。   

【特選】
   未来より枯野にあをき雨の降る   中戸川 奈津実
人間は未来・現在・過去へと流れてゆく時間軸の中に存在していると考えられる。上五の「未来より」に対する、中七下五の「枯野にあをき雨の降る」の措辞が素晴らしい。SF小説を想起させるドラマ性のある作品。

   今日という過去を生きをり寒椿    松永 富士見
座五の「寒椿」に対して、上五中七の「今日という過去を生きをり」の措辞が抜群に効いている。この句も未来・現在・過去へと流れてゆく時間意識を持った佳吟。
           <10.3.6  読売新聞(夕刊) 魂の一行詩より>



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