目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  看板を真似てポーズをとる君の若さにピントを合わせて撮りぬ
                         八幡市  会田 重太郎

カメラの前の屈託のなさ。「君」ではなく「君の若さ」にピントを合わせるところに、この一瞬の貴重さが、表現されている。        【 俵 万智 選 】



■ 夏草に銃置きわれ等シベリアへ   帯広市  吉森 美信 

俳句で過去を回想するのは難しいが、作者はシベリアに抑留された重い記憶を掘り起こし、すぐれた作品を作った。1945年8月突如侵入したソ連軍によって武装解除され捕虜として北の地に送られたのである。句として成功したのは「夏草に銃置き」という具象の正確さによる。この歴史の一場面を俳句に詠った例は少ないのではないだろうか。      【 矢島 渚男 選 】


■ 自然薯掘る考古学者のごとく掘る   埼玉県  坂井 忠正

土深く育つ薯の中でも、自然薯はとくに細くて長く掘り出すのがむつかしい。この自然薯は大採りか栽培のものか、いずれにせよ、これを掘るときには細心の注意をはらわねばならぬ。衒(てら)いを見せずに実見実感した技術と心持を報告体にせず、「考古学者」のそれに重ねて説得力を持たせたところに感心させられた句である。               【 宇多 喜代子 選 】
 

■ 龍宮の色のはじめの桜貝    津市  中山 道春

桜貝は儚(はかな)く、竜宮も人間にとっては幻想のもの。それにもかかわらずこの句には曖昧さが無い。理由は、目の前の一枚の桜貝を拠り所にしたこと、色に焦点を絞ったこと、「の」を重ねて上五中七が桜貝を修飾する安定した構成など。しかし最も大きな理由は、誰のものでもない海とその海の神への畏敬が根底にあることだと思う。         【 正木 ゆう子 選 】


■ 君といふ言葉に春の光あり    香川県  田岡  弘  

「君」と呼びかけることばに春の光を感じるという。確かに「君」は、人を知って、その人と友になろうとした時、呼びかけることばである。呼びかけた人も呼びかけられた人も、ともに眩しい春光に包まれている。主観的な表現ではあるが、まさに真実をついているのだ。ことばそのものを詠んでいる異色作。 
                               【 小澤  實 選  】


今週の特選句
   祝電をうち青春の傷一つ    ( 神奈川県 関野 まき 89歳 ) 
   
  傷口舐めたら、ホロ苦いんでやんの。特選。


ほかに、
  動くなと父が叱った柱傷      ( 福島県 内海 将行 68歳 )
     無理言っちゃいけないお父さん、地震だよ。

  なんとなく新車のキズにほっとする  ( 東京都 吉見ひろし 63歳 )
     俺車持ってないけど、なんか分かる。
   
  傷跡を時々開き確かめる     ( 愛知県 伊藤 弘子 65歳 )
     治りが遅いと思ったら・・・・・・自分のせいか。

  何気無く古傷話す老いの知恵 ( 神奈川県 佐藤 達三 79歳 )
     説得力あるんですよねこれがまた。


家もなく路頭に迷う人々を救おうと、募金活動をする人たちがいた。
そこに物乞いがやってきた。

「オレにも何か恵んでくれよ。オレは馬券を買う金がほしいんだ」

善意の人は驚いて言った。

「ギャンブルなんかとんでもない! 
 あなたが可哀想なのでお金はさしあげます。
 でも、くれぐれも馬券なんか買わないで、
 何か温かいものでも食べてくださいね」

物乞いはていねいに礼を言って、お金を受け取った。

「お礼はけっこう。
 これは神様が小鳥に恵んでくださった麦の一粒だとお思いください」

そして翌日のこと、また同じ物乞いがやってきて話しかけた。

「オレは神様はすごいと思ったよ。本当にお恵みをくださるんだ。
 オレは今日から生活を変えるんだ」

善意の人は喜んだ。

「あなたにも神の御心が分かりましたか」

「ああ、あんたの言った通り、リトル・バードって馬に賭けたんだ。
 そしたら、それが万馬券でよぉ!」
                        【 ’11.01.20 週刊新潮 】



   冬の蜂摑めばやはり刺さんとす    横須賀市  竹山 繁治

弱々しくよろばう冬の蜂。摑もうとすると、腹を曲げて刺そうとする。まだ生命力が残っていたのだ。「やはり」という日常の言葉が生き生きと使われていて効果的。                         【 矢島 渚男 選 】


今週の特選句
   この便じゃ父起こすかも夜行バス   ( 兵庫県 たむ兵 54歳 ) 
   
  もう起きて待ってるよ。おはよう、特選。


ほかに、
  こうなると朝青龍が懐しい     ( 愛知県 川越 公応 61歳 )
     アレはアレでアレでしたよねぇ。

  常よりも朝を感じる夜勤明け  ( 和歌山県 中村 武雄 67歳 )
     う~・・・・・・ン、さぁ、朝だ!よし、呑もう!
   
  町工場朝から金の要る話  ( 神奈川県 宇田川 亀吉 83歳 )
     いや、正しくはゆうべから。そんな毎日。

  門限は朝の6時と決めて出る  ( 東京都 渡辺 智賀子 ?歳 )
     門限決めるだけ大したもんだ。


■湯の峰の湯屋で聞き入る虫の声親ありし世のとほき日を恋ふ
                        神戸市  川村 幸作
熊野詣での湯垢離(ゆごり)場の湯の峰温泉は説教浄瑠璃「小栗判官」にもあるように、昔から人々の心を幽暗な伝承と信仰の世界に引き入れる神秘な場所だった。この一首にも、関西に住む作者らしい世々の日本人の心が、永い伝統を伝える短歌の定型を通して流露している。親は両親でもあり、更に古い遠世の祖(おや)でもある。        【 岡野 弘彦 選 】


■自づから笑みのこぼれて帽子とり山の祠(ほこら)に一つを願ふ
                        直方市  住田 則雄
一読明瞭だが、明瞭にしてどこかに解き難い謎がある、というのに魅かれる。短歌に限らず芸術作品はみなそういうものだろう。どうして、自づから笑みがこぼれたのだろう。  また何を願ったものだろう。作者は一切教えてくれない。でも、なんとなく解るではないか。とても奥のある笑いだ。 【 小池  光 選 】


■空襲の慰霊堂より帰る途(みち)スカイツリーが車窓より見ゆ
                        船橋市  内田 蟷螂
螂東京都墨田区に建設中の東京スカイツリー。新名所として人気が高まり、連日多くの人たちが見物に訪れている。だが忘れてならないのは、ここが昭和20年3月の大空襲などで多大な被害を受けた地域であること。慰霊堂とスカイツリーを対置したこの歌から、作者の真摯な訴えが伝わってくる。
                               【 栗木 京子 選 】

■理髪店の主が鏡の新緑に息吹きかけてみがいておりぬ
                         東京都  小菅 暢子
かがやく初夏の街角を、映画の一コマのように印象的に切り取った一首。 実際は「鏡」に息を吹きかけて磨いているのだが、「新緑に」という文脈にしたところが粋だ。そう見えるという発見でもあるし、本当にそうなのかも、という気分も漂う。昨年の小菅さんは、質、量ともに群を抜いて充実していた。 
                                 【 俵 万智 選 】


  あこがれは奈良西ノ京に住まむこと齢かさねて捨てきれずをり
                         龍ヶ崎市  安藤 善夫 
時代によって西ノ京の所在も変るがこれは薬師寺のある奈良市西ノ京町、古都の面影の濃く残る地への憧憬である。       【 岡野 弘彦 選 】


  木枯らしを電子レンジで暖めて女房の留守の夜に頂く
                          山口市  久保田麗二

レトルトカレーなどでなく、「木枯らし」を電子レンジで暖める。どんな具合になるのかしら。すべてのインスタント食品は木枯らし化された食べ物である。なるほど。                          【 小池  光 選 】



  飛び乗りし電車はなんと各停でしょうがないだろじたばたしても
                           茨木市  瀬戸 順治

よくありそうな場面。かかることのみならず、人生じたばたしてもしょうがない。せめて行き先同じでよかったのだ。            【 小池  光 選 】



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