目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   転がりて好きな向きあり昼寝の子   橋本市  若崎 喬子

昼寝をしている子が、一定の向きで眠っていることに気付いた。その向きで眠ると楽なのだろう。その姿を見ているだけで安らぐのだ。 【小澤 實 選 】


  写真家は掏摸なりと言ふ土門拳幼児の無垢の一瞬を盗む
                         吹田市  辻井 康裕

本人も気づかない一瞬の輝きを盗み取ってこそ、優れた写真家といえよう。「掏摸(すり)」という語にドキリとするが、こんな魅力的な盗人になら出会ってみたい。                           【 栗木 京子 選 】


今週の特選句
   何匹か胸に残して鬼は外    ( 大阪府 辻下 和美 60歳 )  
     福の入る余地はありますか? 特選。


ほかに、
  鬼嫁の無邪気な寝顔惚れなおし ( 愛知県 住友 暉男 72歳 )
     それ、起きているときに言ってあげなきゃ。

  みな俺がいよがいまいが洗濯す ( 大阪府 軟達亭愛弗 56歳 )
     キレイ好きなんだねぇ。
   
  鬼なりの正義を人は悪と呼び   ( 埼玉県 飯嶌 直樹 44歳 )
     哲学的な五七五ですな。

  鬼ごっこ塾へ行く子が抜けてゆき ( 大阪府 渡辺 たかき 51歳 )
     塾での鬼ごっこはもっと熾烈(しれつ)だ。




お祖父さんが医者にバイアグラの処方箋を書いてもらった。
けれども村にある薬局はたった一軒。
噂が立つのを恐れて、お祖父さんは孫に買いにやらせることにした。

 「おい。悪いが薬局でこの薬を出してもらってくれ。
  しかし絶対、わしが飲む薬だとは言わんでくれ!
 小遣いを10㌦やろう」

薬をもらって帰った翌日、孫の枕元には50㌦が置かれていた。

 「こんなにもらっていいの?」
 
 「ああ、それには祖母さんの40㌦も入っとる」
 
                        【 ’11.06.23 週刊新潮 】


   足とめて見てゐる雨の蛇苺   枚方市  菅原 イツエ

蛇苺のつややかな美しさに立ち止まる作者がいる。 名前は不気味だが、有毒ではない。雨の中でと言って執心のさまが伝わる。【 矢島 渚男 選 】


   殻を出ず余震の中の蝸牛   千葉市  椿  良松

カタツムリが頭を出さない。この句は余震中だが、その前からかもしれない。動物たちは地震に敏感だ。今度の大地震でもさまざまな予知行動が報告されている。その点、人間はまだまだ彼らに及ばない。 【 矢島 渚男 選 】 


   母の日も変らぬ母でありにけり   横浜市  岡部 重喜

輸入されて半世紀。 今では、日本風「母の日」として定着した。 その日を いつもと同じように過ごす母。日本風の母の面影が見えてくる。
                              【 宇多 喜代子 選 】


   包丁を持つて山女にみとれたる   久喜市  深沢 ふさ江

届けられた山女を調理しなければならない。腹を割いて、腸をぬかなければならないのだが、まな板の上の深山の魚の美しさに打たれている。 「みとれたる」が真率。                       【 小澤   實 選  】


 推敲を楽しむ  正木 ゆう子

推敲(すいこう)の第一歩は、出来た句を声に出して読むことである。

紫陽花(あじさい)はまだ薄緑なり肘枕

見ただけではわからなくても、声に出せばすぐに中七の二音の字余りに気付くはず。実はこんな単純な字余り・字足らずが投句にはとても多いのだ。

紫陽花はまだ薄緑肘枕

これでリズムが整った。肘枕をしながら庭の紫陽花を眺めている気持ち良さが伝わる。しかしこれからが推敲の楽しみ。すこしでも良くするために目を凝らすと、「薄緑肘枕」と漢字が続くのがうるさい印象。そこで、

紫陽花はまだ薄みどり肘枕

これで十分だが、さらに倒置も試すだけ試してみようか。

肘まくら紫陽花はまだ薄緑

さらに悪戯(いたずら)心を起こして、肘枕を膝枕にしてみたり。

膝枕あじさゐはまだ薄緑

そうすると恋の句になる。どの段階の句に決めるかはお好みしだい。
推敲はこんなふうに楽しい。
 


  青くるみ死者は生者の中にのみ   花谷 清 ( はなたに きよし ) 

死者とは肉体を失った人。その死者は生者の記憶の中にしか存在しないというのだ。この句を読んで今回の大震災で亡くなった多くの人々を思った。家族ごと亡くなった人をだれが記憶にとどめるか。肉体を失うことは、かくも切ない。                      【 四季 ・ 長谷川  櫂 選 】


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