友できて少年の夏はじまりぬ

【 正木　ゆう子 選 】
　　　友できて少年の夏はじまりぬ　　　可児市　　羽貝　昌夫

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【参照　08.09.11】
　　　夜光虫親より友を選びし日　　　広島市　　佐保　光俊

親が絶対だった子供時代から、思春期に入って、初めて友達を優先した思い出だろう。親が止めるのを聞かず、夜の海へ行って見た神秘の煌（きら）めき。季語が抜群に効いている。　　　　　　　　　　　　　【 正木　ゆう子 選 】

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【参照　10.09.06】
　　　先輩に挨拶をするわが孫は今われ知らぬ少年になる
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　青梅市　　石井　武美

礼儀正しく、少し緊張しながら先輩に挨拶（あいさつ）する孫。家族とはまた違った社会の中で生きる少年の姿が見える。下句が新鮮。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【 栗木　京子 選 】

お題 「 恥 」 （ '12.05.24 ）

今週の特選句
　　 恥ずかしいでも楽しいの恋だもの （ 熊本県　岡田　勝雪　７４歳 ）　　
　　　 　その気持ち、懐かしいな。よっしゃ、特選！

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ほかに、
　　恥ずかしやこの齢をしてまだもてる　（ 兵庫県　湯之上　茂　８１歳 ）
　　　 　いーーなーー。あやかりたいなぁ。

　　若くない二人が照れる披露宴　　  （ 千葉県　石藤　浩一　４９歳 ）
　　　 　えー、　余興の御用命はございませんか？
　
　　鑑定をしなけりゃお茶ワンまだ家宝　（ 福岡県　吉岡　千鶴　７２歳 ）
　　　 　誰だい一千万て言った奴ァ。

　　恥ずかしい物は燃やせた薪の風呂　 （ 岡山県　丸橋　　稔　？歳 ）
　　　 　いつも燃え残ってたよ、エロ本。

温情判決

暴力を受けていた次男を殺害したとして殺人罪に問われた、横浜市南区・無職 A被告（７４）の判決が１４日、横浜地裁であり、大島隆明裁判長は「十分に同情できる理由があり、刑事責任は殺人の中では軽い」と述べ、懲役３年、執行猶予５年（求刑・懲役６年）を言い渡した。

判決などによると、A被告は昨年１１月１３日午後１１時半頃、同区の自宅で同居していた次男・Bさん（当時４１歳）の首を電線ケーブルで絞めて窒息死させた。被告は犯行後、「Bを道連れにします」などと書いた遺書を残し、大量の薬を飲み、自殺を図っていた。

大島裁判長は判決で、Bさんがアルコールや睡眠薬に依存し、両親に金を無心したり、暴力を振るったりしたことを指摘し、「被告は万策を尽くした。被害者の将来や自らの今後を悲観し、絶望的な気持ちになったことは非難できない。自分の身を犠牲にしてでも、（息子が）世間に迷惑をかけないように犯行に及んだことは明らかだ」と述べた。

裁判長は「介護が必要な妻の世話をすることが償いになる。その助けになってもらいたい」と説諭した。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【 ’１２．０５．１５　・　読売新聞  】

濡れ縁のやはらかき雨ゆきやなぎ

　　　濡れ縁のやはらかき雨ゆきやなぎ　　　我孫子市　　前田　寿雄

雨戸の外にある雨ざらしの濡れ縁は、家と外の中間のような場所。
それゆえに雨にも近く、木々にも近く、ぼんやりするには打ってつけ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【 正木 ゆう子 選 】

歩いてるやうな「母」の字聖五月

　　　歩いてるやうな「母」の字聖五月　　　京都市　　峰尾　秀之
　　
そう言われれば真ん中の横棒が左右の腕、右下のはみ出た部分が両足に見えないこともない。ちょっと太めで忙しそうな母の姿。　【 正木 ゆう子 選 】

花筏ゆつくり日本どこへ行く

　　　花筏ゆつくり日本どこへ行く　　　下田市　　和泉　　好

ゆるゆるとかたちを変える花筏（いかだ）。　それにつけても、案じられるのは日本。どこへ行くのだろう。　　　　　　　　　　　　　　　【 宇多　喜代子 選 】

今度いつ会へるか蓬摘みにけり

　　　今度いつ会へるか蓬摘みにけり　　　日高市　　金沢　高栄

久しぶりに帰った子に、蓬（よもぎ）を摘んで草餅をつくってやる。　次はいつ会えるのか。優しい気持ちが伝わる。　　　　　　　　　　【 矢島　渚男 選 】

ふと見れば鏡に子を抱くひと映る そうだ私は母になったか

　　ふと見れば鏡に子を抱くひと映る　そうだ私は母になったか
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　名古屋市　　山本　　望

若いママの歌。赤ちゃんを抱いて鏡に映る自分は、これまでまったく知らない自分だ。母親となった神秘と喜びが素直に伝わる。文字通り新しい人生のはじまりだ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【 小池　　光 選 】

夜桜や目つむる貌のそこにあり

　　　夜桜や目つむる貌（かお）のそこにあり　　　井上　純子

私には、今生の最後となる夜桜を全身で感じ取ろうとする景が見える。死を受け入れた者が持つ透明なものが伝わってくるからだ。
　　　　　　 　　　【 角川　春樹 選　　魂の一行詩 （ ’１２．０５．１２ ） 】

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角川春樹の感性は、突然、とてつもなく偉大な詩人に変貌する。この評を読んでいると、彼自身が死を身近なものに感じているようで重い。

お題 「 庭 」 （ '12.05.17 ）

今週の特選句
　　 庭いじりしてた父真似空見上げ （ 愛知県　長谷川めぐみ　３９歳 ）　　
　　　 　陽射しがまぶしいですね。　ん、特選！

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ほかに、
　　欲しいのは庭ではなくて俺の部屋　（ 奈良県　久米　朋尚　７６歳 ）
　　　 　だから庭がお父さんの部屋なのよ。

　　子は巣立ち妻逝き家庭の跡に住む  （ 大阪府　國米　純忠　８３歳 ）
　　　 　奥様はそばにいらっしゃいますよ。　　
　
　　職場には遠いが庭に鳥が来る　　　　　（ 香川県　いのさん　６３歳 ）
　　　 　いいなぁ、健全！

　　こっそりと火種を庭に埋めておく　　　 （ 秋田県　京野　幸子　７７歳 ）
　　　 　なんだかとっても恐ろしいですわ。