目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   存在と時間とジンと晩夏光   角川 春樹

私は6年前、刑務所の独房にいた。それは正に忍耐の2年5ケ月と3日間だった。その間、私は過去に生きていると考え続けていた。耐え難い月日を、鉄格子の中の現実を未来から確認すれば、全ては過去の出来事に過ぎない。哲学者のハイデガーは名著『存在と時間』の中で、過去も未来も現在から派生するものと捉えている。しかし私の獄中体験に照らすと、時間は過去・現在・未来へと流れてゆくのではなく、未来・現在・過去へと流れてゆく時間軸の中に人間は存在していると考えざるを得ない。思想のない一行詩が存在しないと同様に、詩人は自己の存在を中心とした時間意識を持たなければならない。


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