目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  雁(かり)帰る夜空に声をつなぎあひ   水戸市  中崎 正紀

「流燈(りゅうとう)の待ち合わせゐる淀(よど)みかな」、  
「しろがねのひかり水切る放ち鮎(あゆ)」 など、
年間をとおして拡張高い作品を寄せられた中崎氏を推奨する。夜空を渡る雁の群れが声で互いを確かめ合っているという清冽(せいれつ)な写実句であるが、それにとどまらず連帯という生物の普遍の営みに思いが広がってゆく秀句である。                        【 矢島 渚男 選 】

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  虫鳥の瞠(みは)る両眼(め)へ春の風   厚木市  山本 啓介

春の到来のうれしさは人だけではなく、冬の間こもっていた小さな虫や、餌の少ない冬季を生きてきた鳥も同じだという視点で作られた句。 実際に虫や鳥が眼を開いたというのではなく、それぞれの動きが活発になったということ。虫や鳥と同じく、人も春の万象へ眼を向け、春風に心身をゆだねる。春を礼賛する句として心に残る。              【 宇多 喜代子 選 】

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  三月がゆく三月をのり越えて   宇陀市  泉尾 武則

上五の三月は2012年の三月であり、これから毎年やってくる三月のことでもある。対して中七の三月は、東日本大震災の起こった2011年の三月のことであろう。 そこで時が止まってしまったような「3・11」を象徴的に詠み、しかもリアル。 さらに、もっと違う解釈も可能な重層性もあり、読み手に深くものを考えさせる。                     【 正木 ゆう子 選 】

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  鍋に呼ぶ一人増えてもだいじょうぶ   所沢市  近藤 栄子

我が家の夕餉(ゆうげ)に友人を誘っている。「急なことで、ご迷惑でしょう」と尻込みする友人を説得する形でできている。「大丈夫」の断言がうれしい。 「一人二人増えても可能」なのが鍋もののいいところ。 この料理の本質を捉えた。「鍋もの」の意の「鍋」は冬季の季語と考えている。日常語も交えての自然体の句。上々である。                【 小澤  實 選 】




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