目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   冬至晴そんな一と日でありにけり   前橋市  豊嶋 和夫

冬至の日、12月とも思えないようないい天気。大きな出来事でも何でもないこんなささやかな感慨を抱く。                    【 宇多 喜代子 選 】 


  動かぬは如何なるちから幾年を書棚の真中に立つ『夜と霧』
                               海南市  寺杣 明子

フランクルの歴史的名著『夜と霧』。わが書架の中央に立って幾十年、まるで本棚の王者のごとし。古典とはかくのごときものであろう。       【 小池  光 選 】


  人念(も)えと人忘れよと陰影(かげ)ふかくあじさいゆらぐ午後に食卓
                              東京都  長田 裕子

最近は「あじさい」にも多様な色変りができたが、もともと花色が時期により変る花だ。その特色を巧みにとり入れて、人情の変化とひびき合わせた上の句の表現。そして下の句のおっとりした収め方、一首の構成への心配りがまことに心ゆきとどいてみごとである。                             【 岡野 弘彦 選 】

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  尼寺のおたまじゃくしに足が生(は)えこのしずけさに鳥肌が立つ 
                     竜ヶ崎市  矢矧 (やはぎ?) 菜穂吉

ふしぎなイメージを喚起する歌。尼寺に池があっておたまじゃくしがうようよ泳いでいる。そのおたまじゃくしに足が生える。自然の摂理といえば摂理だ。しーんとしてあたりに誰もいない。ふと鳥肌が立つという感覚は、実にするどく、共感する。
                                      【 小池  光 選 】

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  川挟みラジオ体操する人のジャンプのずれの愉しかりけり
                              松山市  宇和上 正

情景の中に「動き」を入れると歌が生き生きとする。この歌はラジオ体操の音楽に合わせてジャンプする人に目をとめている。その動きが微妙にずれているところがポイント。揃(そろ)わないことで、人々の動きに親近感が伝わった。さらに、川を挟んで眺めていることも歌の空間に広がりを添えている。       【 栗木 京子 選 】 

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  地下書庫の資料をめざし百年をエレベーターで一気にくだる
                            八王子市  阪本 ひろ子

図書館等での調べものの場面だろう。百年前の資料を手にする時の、わくわく感が伝わってくる。エレベーターを、時をさかのぼる乗り物として、タイムマシーンのように表現したところが魅力だ。思えば、文字というのはタイムカプセルでもある。現在形の結句が、臨場感と勢いを感じさせて、効果的。        【 俵  万智 選 】


   堤防に立てば初富士初筑波   加須市  野口 勇一

この堤防なるところいい場所ではないか。いつも見ている富士山に筑波山が一夜で「初富士初筑波」となる不思議。              【 宇多 喜代子 選 】


   凧あげて伊勢のよき風子に持たす   津 市  中山 道春

親子で凧(たこ)揚げをする。はじめのところは父が操り、風に乗ったところで子に渡す。あとは「伊勢のよき風」にまかせる。父子の絆、在所の絆の濃さがにじむ。
                                   【 宇多 喜代子 選 】


   一日が一日押して年詰まる   西条市  平井 辰夫

12月も半ばになると、「一日が一日押して」日が過ぎてゆく。今日は昨日に押され、今日は明日を押す。納得できる表現だ。        【 宇多 喜代子 選 】


   大豆炊く湯気はやうまし納豆結(ゆ)い   千葉市  沢  史生

昔の農村ではこんな結もあったのだと知る。湯気も、茹でたての大豆も藁苞(わらづと)に出来上がった納豆も、どんなに美味(おい)しかったことだろう。
                                   【 正木 ゆう子 選 】


   炉語りは磁場逆転に及びけり   東京都  望月 清彦

地球は大きな磁石のようなものだという。その北と南の逆転が数十万年に一度起こるとか。そんなスケールの話題になるのも、原初の炎を見つめ合う夜だからこそ。
                                   【 正木 ゆう子 選 】


   クリスマス馬房に届く蒸しタオル   小平氏  土居ノ内 寛子

馬を労(ねぎら)う蒸しタオルか。キリストの生誕には諸説あるが、少なくともこの句ではクリスマスと馬房の取り合わせは相性がいいようだ。     【 正木 ゆう子 選 】


   梟の片目休めてをりにけり   秋田市  中村 栄一

梟(ふくろう)は夜行性の猛禽(もうきん)。 昼は瞑目(めいもく)し、夜にかっと眼を開く。その片目を休めている。さていかなることか。仔細(しさい)は不明だが、ありそうなことだと思わせる。                      【 宇多 喜代子 選 】

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   梟の片目は義眼かもしれず   秋田市  中村 栄一

梟(ふくろう)は夜行性の猛禽。闇の中でたたずむ写真を見るたびに、どこを見ているのかわからないその目が不思議に思われてならない。
                             【 10.01.25 宇多 喜代子 選 】


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