目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   意味もなくただ赤飯が食べたくて一合あまりの米研ぐ夕べ
                              横浜市  芳垣 光勇

一人暮らしの方だろう。 ふとお赤飯が食べたくなって、炊く。 別になんの祝い事があるでない。気ままさとさびしさが漂う。                【 小池  光 選 】


   神様の名前を知らず初詣   神奈川  中島 やさか

本当にそうですね。長くて難しい神様の名前は覚えようもないし、その必要もない。日本人のおおらか賢明な精神の在りようだろうか。 神様はそれでいい。 神の名で殺し合うような世界の中では知恵だ。              【 矢島 渚男 選 】


   置場所に困つてをりぬ福達磨   あらゐ ひとし

つい、ものの弾みで買っては来たが、さて、大き過ぎた縁起物。
                                    【 矢島 渚男 選 】


  老い桜冬陽に木肌あたたかし花芽しづかに春を待つらし
                               横浜市  本間  勝

初冬の桜の老い木の姿に、春の兆しを予感している歌だ。下の句「花芽は疼(うず)きて春を待つらむ」とあったのを、この形に改めた。上の句の良さが生きたはずである。                                 【 岡野 弘彦 選 】


   残りもの大鍋で煮て牧終い   栃木県  あらゐひとし

「討入の日を風俗の街にをり」 「給食のおばさんとハグ卒業子」 「遠泳のゴールの島で妻を待つ」 など年間を通じユニークな視点を持つ高水準の作品を作った。 
高原の牧場終(じま)いの句には牛馬が登場するのが普通だが、彼らはもうトラックに乗って出発を待っているのだろう。その省略が見事。     【 矢島 渚男 選 】
 

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   新米の渾身といふ光かな   茅ヶ崎市  清水 呑舟

秋、新米の光と鼻腔(びくう)に広がるその香りに会うたびに、安堵(あんど)の気分をあじわう。田仕事が機械化されたとはいえ、頼りにするのは夏の日差しと雨に風と円滑な作業。新米が無事に稔るのはまさに時機に添った作業と五風十雨の恵みである。この恵みを「渾身(こんしん)」という二字にこめたところが忘れがたく、本年の年間賞とした。                         【 宇多 喜代子 選 】

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    稲刈や先祖代々空が好き   横浜市  津田  寿

明るさと単純さにおいて際立っていた一句。「稲刈」も「先祖代々」も「空が好き」も普通の言葉であり、内容もごく普通。しかし改めてこう言われると、ああ、人間はこのことさえ忘れなければ大丈夫だと思わせてくれる。稲の育つ健全な土、働くことのできる平和、晴れ晴れと空を仰ぐ心のゆとり。その他に何が要るだろう。
                                    【 正木 ゆう子 選 】

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   鳥の糞瞬時に灼けぬ岩を打ち   名古屋市  可知 豊親

鳥の放った糞が、岩を打った瞬間に、岩にやきついてしまったというわけだ。剥(む)きだしの岩があるということは、場所は河辺か磯かであろう。時間は夏の暑き日の午後。鳥の糞だけを即物的に描くことで、生々しい音や匂いも感じとらせた。鷺(さぎ)か鵜(う)といった大型の鳥の気配を宙に感じる。瞬時という時間を切り出しているのもみごと。                             【 小澤  實 選 】


   保育器に心臓の音雪ふる日   市川市  住吉 たけのり  

何らかの理由で保育器に入っている赤ちゃん。 雪の降るしずかな日、赤ちゃんは小さなからだで精一杯生きている。小さな鼓動が大音響に聞こえる。
                                   【 宇多 喜代子 選 】

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   秋夕焼(あきゆやけ)赤黒き1000gの吾子
                東国原 英夫 ( ひがしこくばる ひでお )
                    【 07.09.07 TBS「プレバト」  夏井 いつき 選 】


   雑煮食べをり餓死兵のことをふと   香取市  関  沼男

シベリア抑留の悲惨な体験を詠(うた)っている人。 雑煮を食べながら、餓死した仲間の戦友たちを思い出す。この国際法違反の事実をなぜ世界に訴えずにきたのだろう。                              【 矢島 渚男 選 】


  落ちてゐるのはおほかた右手寒空に素手でなくては掴めぬ何か
                              海南市  寺杣 明子

右の手袋が落ちているのだが、右手そのものが落ちているようでドキリとする。利き手の手袋をはずして掴もうとしたものは何なのか。見えない何かだったのかも。
                                    【 栗木 京子 選 】 


   省略の過ぎて海鼠となりにけり   奥山 源丘 ( みなもと げんきゅう )

「蛇、長すぎる」というルナールの詩にならえば、「海鼠(なまこ)、単純すぎる」となるのだろうか。たしかに海鼠は生物の中では単純な部類に属する。ただそれは人間からみてのこと。海鼠からみれば「人間、複雑すぎる」。句集『山火の勢(きおい)』から。                    【 '17.11.21 四季 ・ 長谷川 櫂 選 】


   さみしさに負けない麒麟日向ぼこ   椿  良松

動物園に行くたび熱帯産のキリンなどは寒くないか、と心配するが、結構元気そうにしている。 でも、長い頸(くび)を上げて遠くを見ているようで可哀(かわい)そう。 孤独に耐えているのか。                      【 矢島 渚男 選 】


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