目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
同居する孫に手紙を出しにけり2の五つ並ぶ消印のため
千葉県・匝瑳(そうさ)市 椎名 昭雄
平成22年2月22日の消印には「2」が五つ並ぶ。 記念すべき日なのだ。孫の喜ぶ顔が見たくてわざわざ手紙を出した作者。「同居する孫に」がいっそう楽しい。 【 栗木 京子 選 】
千葉県・匝瑳(そうさ)市 椎名 昭雄
平成22年2月22日の消印には「2」が五つ並ぶ。 記念すべき日なのだ。孫の喜ぶ顔が見たくてわざわざ手紙を出した作者。「同居する孫に」がいっそう楽しい。 【 栗木 京子 選 】
石仏の簡単な顔桃の花 谷 雄介
仏様の顔は簡単である。というのは、複雑な顔はたいてい悩みを抱えている顔だから、人々に安心を与え、救いをもたらすことができない。悩みを一つずつ取り除いてゆけば顔は簡単になる。そんな仏の顔が桃の花に照り映えている。 【 四季 ・ 長谷川 櫂 】
仏様の顔は簡単である。というのは、複雑な顔はたいてい悩みを抱えている顔だから、人々に安心を与え、救いをもたらすことができない。悩みを一つずつ取り除いてゆけば顔は簡単になる。そんな仏の顔が桃の花に照り映えている。 【 四季 ・ 長谷川 櫂 】
白魚汲む婆4,5人が遊ぶごと 細川 加賀
「白魚汲(く)む」とは白魚漁のこと。 産卵のため河口に集まる白魚を舟で待ち構えて掬(すく)いとる。この句、おばあさんたちが白魚を汲んでいるところだが、相手もはかない白魚なので遊んでいるようでもある。 子ども同様、これも無我の境地。 【 四季 ・ 長谷川 櫂 】
「白魚汲(く)む」とは白魚漁のこと。 産卵のため河口に集まる白魚を舟で待ち構えて掬(すく)いとる。この句、おばあさんたちが白魚を汲んでいるところだが、相手もはかない白魚なので遊んでいるようでもある。 子ども同様、これも無我の境地。 【 四季 ・ 長谷川 櫂 】
ぶらんこにパンツ丸見えなど平気 町田市 枝沢 聖文
ぶらんこは春の季語。スカートをはいた小さな女の子が乗っている。勢いよく漕ぐので、パンツ丸見え状態になってしまう。でも気にしない。今、ブランコに夢中なのだ。 【 小澤 實 選 】
ぶらんこは春の季語。スカートをはいた小さな女の子が乗っている。勢いよく漕ぐので、パンツ丸見え状態になってしまう。でも気にしない。今、ブランコに夢中なのだ。 【 小澤 實 選 】
血縁の故に結ばれざりし君老いてなほわが幼名呼べり
川崎市 大同きみゑ
結ばれることはなかったが絆は変わらず続いている。一篇の物語を読むような静かな余韻の残る歌。 「幼名(をさな な)呼べり」が趣深い。
【 栗木 京子 選 】
川崎市 大同きみゑ
結ばれることはなかったが絆は変わらず続いている。一篇の物語を読むような静かな余韻の残る歌。 「幼名(をさな な)呼べり」が趣深い。
【 栗木 京子 選 】
「未完」の語は、「完成」の反対語だが、思想性の高い語彙である。何故なら宇宙も神も完成しておらず、完成することなく終焉(しゅうえん)を迎えるからである。いわば初めもなく終わりもない。これは事実である。「脳」の存在も、人間が指向する限り進化し、死をもって終わるが、人間そのものは常に未完で終わる。人間も、宇宙も、神仏も未完成の存在なのだ。
【特選】
未来より枯野にあをき雨の降る 中戸川 奈津実
人間は未来・現在・過去へと流れてゆく時間軸の中に存在していると考えられる。上五の「未来より」に対する、中七下五の「枯野にあをき雨の降る」の措辞が素晴らしい。SF小説を想起させるドラマ性のある作品。
今日という過去を生きをり寒椿 松永 富士見
座五の「寒椿」に対して、上五中七の「今日という過去を生きをり」の措辞が抜群に効いている。この句も未来・現在・過去へと流れてゆく時間意識を持った佳吟。
<10.3.6 読売新聞(夕刊) 魂の一行詩より>
桜貝たくさん落ちてゐて要らず 高柳 克弘
浜辺に桜貝が散り敷いている。それを「要らず」とは、若々しい気概のあふれる断言である。もしも作者が若者でなければ、たとえ要らなくてもわざわざ「要らず」とはいわなかっただろう。自然界の春だけでなく人生の春を謳歌(おうか)する一句。 【 四季 ・ 長谷川 櫂 】
浜辺に桜貝が散り敷いている。それを「要らず」とは、若々しい気概のあふれる断言である。もしも作者が若者でなければ、たとえ要らなくてもわざわざ「要らず」とはいわなかっただろう。自然界の春だけでなく人生の春を謳歌(おうか)する一句。 【 四季 ・ 長谷川 櫂 】
流し雛誰の穢れを移したる 東京都 岩崎 美範
女児の穢(けが)れを引き受けて遠くへ運んでくれるという雛(ひな)。華やかに見えて切ない雛流しである。 【宇多 喜代子選】
女児の穢(けが)れを引き受けて遠くへ運んでくれるという雛(ひな)。華やかに見えて切ない雛流しである。 【宇多 喜代子選】
遠き日のおみくじ好きの乙女子は吾を選びしがはや位牌なる
東大和市 板坂 寿一
乙女子はやがて作者の妻となり、作者を残して亡くなってしまった。四句目までの明るい内容が結句に来て悲哀に転じる。おみくじを引くたびに甦(よみがえ)る思い出が切ない。 【 栗木 京子 選 】
東大和市 板坂 寿一
乙女子はやがて作者の妻となり、作者を残して亡くなってしまった。四句目までの明るい内容が結句に来て悲哀に転じる。おみくじを引くたびに甦(よみがえ)る思い出が切ない。 【 栗木 京子 選 】
晩年の父むささびを飼ひならし孫のごとくに遊んでゐたり
筑紫野市 和田 秋生
ムササビが人に馴れるとは知らなかったが、こういうこともあるのである。神秘的なる老父とその「孫」のすがた。なんとも味わいふかい晩年だ。
【 小池 光 選 】
筑紫野市 和田 秋生
ムササビが人に馴れるとは知らなかったが、こういうこともあるのである。神秘的なる老父とその「孫」のすがた。なんとも味わいふかい晩年だ。
【 小池 光 選 】