目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  黒髪のみだれもしらずうちふせばまづかきやりし人ぞ恋しき
                       和泉式部 ( いずみしきぶ )

黒髪の乱れるままに嘆き伏す女性。その心に中では髪を撫(な)でてくれた昔の男を思い出している。 冷ややかな黒髪のひとすじひとすじがその手の感触を記憶して、懐かしさに震えているかのようだ。女心を歌の調べにのせて豊かに歌いあげる。               【 四季 ・ 長谷川  櫂 選 】


   バナナ食ふ不運の続く筈もなし   美唄市  井上 裕之

不運が続けば、今後不運にみまわれる可能性は減る。人生肯定の思いがうれしい。バナナは甘く、食べるのに刃物はいらない。明るい思いに、バナナという果物が似合う。                    【 小澤  實 選  】


   眉描かぬ未完の顔のひと一人乗り込んできし早朝のバス
                          東京都  小菅 暢子
 
化粧の続きは、バスの中でするのだろうか。「未完」というやや大げさな一語が、描きかけの絵画や途中の作品を思わせて、面白い。 【 俵 万智 選 】


  ヒロシマのくだけちる音きこえたり   たなか るり
  風ときてまた風とゆくすばるの忌      同

  ぼくたちは未来の底にすんでいる   たなか まり

一句目は、8月6日に行われる原爆の慰霊祭を詠(うた)った作品。
二句目は、私の母・照子の忌日を次の私の作品を踏まえて作句した。   
  < 母坐るところに春の風があり   春樹 > 
一方、たなかまりの句は、今回の福島原発事故を詠んだ。
「未来」ではなく、「未来の底」と言ったところが凄(すご)い!
たなかるりは7歳、妹のまりは4歳。2人の天才少女の出現によって、
「魂の一行詩」の文学運動は新たなるステージに入ったと断言できる。
         【 角川 春樹 選 魂の一行詩 ( 11.06.04 ) より 】


  金魚屋へちよつと立ち寄る昼休み  黒木 豊子 (くろき とよこ)
 
サラリーマンの昼休み。お昼を食べたあと、途中にある金魚屋をのぞいてゆく。みごとな尾びれの琉金(りゅうきん)やまだ朱色のささない稚魚たち。東京の下町にはところどころに金魚屋がある。 隅田川のほとりの水の町であったころの記憶のように。               【 四季 ・ 長谷川  櫂 選 】


   ぽんと上げぽんと呉れたり紙風船   枚方市  小野田幸子


紙風船をぽんと上げ、ぽんとこちらにくれる。単純なやりとりだが、この二つの「ぽん」は誰か相手があってのこと。いいなあと思う。 【 宇多 喜代子 選 】


   幼子の並んで歩くさくらかな   吉川市  戸張  等 

単純な句だが、単純のよさがある。何歳くらいかな。双子なのかな。それとも近所の子供同士かな。そんな想像も自然に湧いてくる。【 矢島 渚男 選 】   

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   葉桜や今生きてゐて立眩む   八王子市  福岡  悟


   赤子いまこの世の風に花に触れ   東広島市  児山 順子  

時は春。生まれ出たばかりの赤子が、はじめてこの世の風に触れ、今年の花に触れた。これから生涯の春ごとに触れる風に花である。 
                             【 宇多 喜代子 選 】                    


   かたまつて遊ぶ子のゐるさくらかな   米子市  杉原 徹勇

桜のころ、子がかたまって遊んでいる、なんと和やかで懐かしい風景だろう。どこにでもあったこんな風景が、いま、とても貴重なものに思われる。
                              【宇多 喜代子 選】


   芋を植う強き余震にもろ手着き    笠間市  沢崎だるま

今できる、そして今すべき間違いなく一番大切な仕事として、揺れ止まぬ大地に食べ物を植える。立っていられないときはもろ手を着く。なんと強い姿勢だろうか。                          【 正木 ゆう子 選 】


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