目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   地球の影届くところに冬の月   足利市  長  芳男

地球の影に月が入る月食は確かにこうも言える。 言えるが、なかなかこんなふうには誰も言わない。 月はそれほど近くにあるのだ。 月食は地球の影が見える唯一の機会。                    【 正木 ゆう子 選 】



   昔むかし伝書鳩一羽が賞品のクイズありけり少年雑誌
                        佐世保市  近藤 福代 

そう、ぼくも覚えている。思わず胸がときめいた。少年倶楽部だったろうか。 年頭からなつかしのメロディー的になった。        【 岡野 弘彦 選 】


  入院のわが鬚も爪も伸びにけり天遣(やらは)るる須佐之男を思う
                            東京都  山崎 豊彦

長期入院の後の感慨だが、なにしろ連想のスケールが大きい。日本神話の中で苦悩も怒りも、愛情においても最も深くはげしい神、須佐之男を髣髴とさせる。現代人の衰微してしまった感情を一気にふりはらうような気迫で、病気も退散するだろう。折しも今年は古事記成立1300年に当る。
                                 【 岡野 弘彦 選 】 

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  「ままへ。いきてるといいね」の新聞の四歳の子の手紙に泣ける
                           平塚市  星野 一英

悲劇が感動をもたらすということをこの一首は教えてくれる。後に「おげんきですか」と続く。それが全文。昨年3月31日付の本紙一面に写真入で掲載され強いインパクトを与えた。紙面の記事と読者が短歌を通じてダイレクトに反応しあうという意味で、新聞歌壇ならではの一首となった。 
                                【 小池  光 選 】

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 乾パンに咽(むせ)びて水を流し込む今日を生き抜くそれだけのため 
                           岩手県  小田 わか

東日本大震災により被災した作者。水も食べ物も入手困難な中、必死で常備食の乾パンを飲み込んでいる。「今日を生き抜く」の率直な決意。  そして「それだけのため」のぎりぎりの覚悟。一語一語嚙(か)みしめるような言葉の背後から、心情が伝わる。震災を詠んだ歌の中で、とりわけ印象に残った一首。                        【 栗木 京子 選 】


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 このままでいいはずはなくこのはずく頭の中でホーホーと鳴く
                           塩釜市  佐藤 龍二

震災以降、以前にもまして積極的に歌作にとりくみ、多くの秀歌を寄せてくれた佐藤龍二さん。直接震災を詠んだ力作もあったが、少し距離を置いてウィットを効かせ、精神性を感じさせるこの歌が、一番心に残った。
「このままでいいはずはない」という気持ちが、読者の心にもホーホー響く。
                               【 俵  万智 選 】 




  団栗(どんぐり)の袴はむしろパンツにて   鹿嶋市  津田 正義

(かくと)という、実の受け皿のような部分。帽子かと思っていたが袴でもいいわけで、パンツと聞けば、それも成る程と思われて楽しい。
                               【 正木 ゆう子 選 】



   ゐないゐないばあにきやつきやとちやんちやんこ
                        神奈川県  熊谷 郁子

祖母の「ゐないゐないばあ」に幼い孫が「きやつきやと」反応している。
「ちやんちやんこ」は祖母も孫も着ているのだろう。   【 小澤   實 選 】



   信州の林檎信濃の新聞紙   相模原市  芝岡 友衛

長野から林檎(りんご)が届いた。傷まないための詰物は地方新聞である。思わず広げて読んでしまう。「信州」「信濃」と重ねたのも楽しい。
                               【 小澤   實 選 】



   銀杏を埋めしところを忘れたり   取手市  杉野 寵児

臭い銀杏の実は、しばらく土に埋めておくと果肉が消えてギンナンになる。
さて、掘り出す段になって、どこに埋めたのか忘れてしまった。
                               【 矢島 渚男 選 】



   餅送る家流されし従弟にも   香取市  関  沼男

3月21日付本欄の関さん作「鮟鱇(あんこう)や大津漁港に叔父一家」がずっと気になっていた。震災前の投句である。やはり、茨城県の大津だったのだ。被災地に新しい年がくる。                【 正木 ゆう子 選 】



 この地より永遠(とわ)を願へば捕らはれてオラショ叫びて死にゆきにけり
                            宇佐市  津崎 恵二

長崎県新上五島町に旅して隠れ切支丹を悼んだ歌。「この地より永遠を願へば」と日本に無い永遠を願う信仰に一途であった人々の悲劇を悲しむ、深い悼みがこめられる。               【 岡野 弘彦 選 】


  避難所に手を引かれゆく幼な子も小さきなりに小さき荷を負う
                          つくば市  潮田  清

地震の避難訓練であろうか。私などは戦争中に、小さい体に炭俵を半俵ずつ運ばされた小学一年生の女の子の姿を思う。      【 岡野 弘彦 選 】


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