目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  信濃から送られしリンゴにかぶりつく今年も一人で苦労をしたね
                            札幌市  藤井 義晴

知人から送られたリンゴであろう。  天候不順を乗り越えて、 見事に収穫を迎えたリンゴ。甘みとみずみずしさに作り手の苦労が凝縮している気がする。下句があたたかい。                                 【 栗木 京子 選 】


   脚立据えひと日柿もぎ一個づつ紙に包みて送りし昔
                        四街道市  出浦 章子

一個づつ紙に包んだというところが具体的で情景が目に浮かぶ。紙はおそらく新聞紙であろう。なつかしい秋、なつかしい人々。作者はふかく過ぎ去りし日を思い出している。                                【 小池  光 選 】


   八十を孔子語らず秋深し   みよし市  稲垣  長 

30而立 (じりつ)、40不惑 (ふわく)、50知命 (ちめい)、60耳順 (じじゅん)、70従心 (じゅうしん)は知られるが、孔子は七十と少しで亡くなった。80を越えたら、なんと言っただろう。                      【 矢島 渚男 選 】


   閑中の忙2百ほど柿吊るす   秋田市  中村  耕

「忙中閑あり」の反対「閑中の忙」がユーモラス。自家製にして200はかなり多い。大変でも作る作業は楽しく、あとは太陽に任せて待つだけ。色も美しい柿簾(すだれ)である。                             【 正木 ゆう子 選 】


   石蕗咲いて回転魚雷基地の跡   別府市  河野 靖朗

第二次大戦時に人間を弾代わりにして暗い海に送り出した忌まわしい「回天」。 その基地跡に咲く石蕗(つわぶき)の花。その楚々(そそ)とした花が回天への想いを語らずに鎮魂の念を伝える。                 【 宇多 喜代子 選 】


   残菊の力いっぱい黄なりけり   東京都  望月 清彦

すべてが枯れ果てた庭で、咲き残っている菊の魅力を描いた。晩秋の日を集めているさまを 「力いっぱい」 として描き尽くしている。        【 小澤  實 選 】


  月明のなかに輝く観覧車百年のちは月だけとなる
                       東京都  野上  卓

上句と下句の間に百年の時間が横たわっている。2枚の写真を並べて、手渡されたかのような印象だ。今は主役として輝く観覧車。その無常ゆえに、一層美しい。
                                     【 俵  万智 選 】


   還らざるものの一つに冬の蝶   福神 規子 ( ふくじん のりこ )

行きて還らぬもの、鉄砲の弾、口を出た言葉、青春の日々。『枕草子』にならえばそうなる。 作者が選び出したのは、冬の蝶。 日だまりをひらひらと舞っていたのに、いつの間にかいなくなった。いうまでもなく世界のすべてのものの比喩。
                      【 '14.11.23 四季 ・ 長谷川 櫂 選 】


   天と地を丸めて月見団子かな   東京都  山内 健治

ずいぶん壮大な丸めようである。しかし月見団子ならそれもいいではないか。月も神様が丸めた大きなお団子のように思われて。【正木 ゆう子 選】


   鳥も人も去るものは去り秋深き   喜多方市  五十嵐 信弘

定住者の居直った覚悟のようなものが感じられる。 飯田龍太に 「去るものは去りまた充(み)ちて秋の空」 があるが、少し趣が違う。       【 矢島 渚男 選 】


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