目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   初日記庭に猫来て雀来て   和泉市  白井 恭郎

これから書き込む365日の未知の日々。大きな出来事、珍しい楽しみがあるかもしれない。 とは思うものの、猫や雀に囲まれて始まるのが日常というもの。
                                   【 宇多 喜代子 選 】


   干満の潮との暮らし年歩む   銚子市  幸保 香人

一日に二度干満を繰り返し、さらに月の満ち欠けにより大潮・小潮と変化する海。常にそのリズムと共にある暮らしとはどんなものだろう。経験の無い者には神秘である。                                   【 正木 ゆう子 選 】


  限りなく上を見ていたあの時代円谷幸吉の遺書いたましき
                          横浜市  森  秀人

― 東京五輪から半世紀が過ぎた ― と 詞(ことば)書きがつけてある。敗戦から 20年を経て日本中が上昇思考に燃えていた。 円谷選手の誠実さと、痛ましい遺書が心に残る。                         【 岡野 弘彦 選 】


   はらからの終(つい)にそろわぬ炬燵かな  谷川 ( たにがわ )  すみれ

炬燵(こたつ)は家族の歴史を記憶している。 たとえば正月、 兄弟姉妹がとうとうそろわなかった。それがやや哀(かな)しいのは、炬燵のまわりに全員が顔を並べた子どものころの思い出があるから。炬燵を見るたびに、その思い出がよみがえるのだろう。                  【 '15.01.19 四季 ・ 長谷川 櫂 選 】


   冬休みのびのびとした朝ねぼう
            東京都 江東区立第6砂町小学校3年 石田 蓮

本当はよくない「朝ねぼう」を、のびのびとしていると言って、ちっとも悪びれていないのがゆかいですね。佐藤辿(注1)くんと石田蓮くんの句はともに正直な思いを詠んでいます。「マラソンをがんばろう」 「朝ねぼうはやめよう」では標語(ひょうご)になってしまいます。俳句は心の奥(おく)の本音をさらけ出すものなのです。
 

  (注1)寒い日にマラソンなんかいくもんか
            東京都 板橋区立板橋第5小学校6年 佐藤 辿
              
 
                【 ’15.01.17 KODOMO俳句 高柳 克弘 選 】


   お飾(かざり)のひとつひとつに燃ゆる音   林  亮( はやし まこと )

松が明ければ正月のお飾りは焚(た)き上げる。これがどんど、左義長(さぎちょう)と呼ばれる小正月の行事である。ひとつひとつのお飾りの火が合わさって巨火となり、 燃える音が合わさって轟(ごう)音となる。 その音を聞き分けるのはお飾りへの感謝の気持ち。            【 '15.01.16 四季 ・ 長谷川 櫂 選 】


  限りなきかなしみ抱(いだ)きめぐみとふ名を呼ぶ母の瞳(め)はやはらかし
                            高槻市  佐々木 文子 

戦争が終わってほっとしていた国民の上に、突如として襲ってきた憎むべき災厄、それが拉致事件だ。母国の国土から突然、外国に拉致され、国民としてのすべてを奪われた人と、その家族の不幸を思う。歌は被害者の母の嘆(なげ)きとして表現してあるが、奥に広がるのは博(ひろ)い人間としての怒りである。
                                    【 岡野 弘彦 選 】


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  妻と住む薩摩の山家冬の夜は大黒柱の裂ける音する
                            霧島市  久野 茂樹

正攻法によるごくまっとうな一首。スケールが大きく、ダイナミック。山里深いところに妻とふたりの生活を営む。しんしんと冬夜が深まってピシリピシリと柱の割れる音がする。しらべがよく通って、韻律またきびしく、内容と表現がよく調和している。「薩摩の山家」というところがとくによい。                   【 小池  光 選 】


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  デザイナーの孫の新作ブラジャーは不要なれども記念に買いぬ
                            東京都  五十代 ひさ

作者は80代。 孫がデザインしたブラジャーに対して「不要なれども」と言い切った率直さに感服した。不要と思いつつもわざわざ購入したところが、なおすばらしい。洋服やアクセサリーでなく下着だからこその味わいがある。 祖母と孫との交流が、 洗練されたユーモアにくるんで表現されている。         【 栗木 京子 選 】


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  それぞれのたった一人を追うレンズ秋桜の群れ揺れるごとくに
                            船橋市  矢島 佳奈

育児と短歌は相性がいい。子どもの成長を短歌というフレームで切り取っていけば、言葉のアルバムになる。矢島さんは、まさにそのように生き生きとした子どもの歌を投稿された。この作品は、少しヒキの視線で、親というものがよく捉えられている。「それぞれのたった一人」が鋭くて、どこか切ない。        【 俵  万智 選 】


   竹馬のままに別れて振り向かず   東京都  望月 清彦

竹馬は冬の遊びの定番で、男の子は特に竹馬の高さを競って乗ったものだ。この句は、子供の日常的な仮初めの別れが、生涯の別れにつながるようにも読めて、余韻がある。                             【 正木 ゆう子 選 】


   日記買ふどこかにきつとなにかある   東京都  吉田 かずや

日記とはまだ見ぬ日、これから来る日を埋めるためのもの。いいことを期待するのだが、「なにかある」としか言いようがない。その未知の日へのおもいの句。 
                                   【 宇多 喜代子 選 】


   紙の門松せめて左右を整えて   千葉県  菅谷 貞夫

立派な門松もある中、 わが家は紙の印刷物だが、 せめて柱の真ん中に真っ直(す)ぐ貼りつけよう。                        【 矢島 渚男 選 】


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