目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   みな消えて防空壕の残る夏   佐野市  高橋 すみ子

昔の風景も、防空頭巾も、消火用バケツも、思い出の人たちもみんな無くなって、防空壕だけが残っている。せめて悲惨な無謀な戦争だけは後世に伝えておきたい。                                  【 矢島 渚男 選 】


   風呂敷の真ん中に置く西瓜かな   横浜市  竹村 清繁

そうだったな、と思わせる。懐かしい風呂敷、その真ん中に大切に置く。帰ってからは井戸の中に吊(つる)した昔の丁寧な暮らしぶり。      【 矢島 渚男 選 】


   少年の鎖骨のくぼみ海開   鶴岡市  広瀬  弘

いまだ発達途上にある少年のひょろりとした体躯(たいく)を目の当たりにしているよう。海開の日はまだ梅雨最中。海水がひやりと肌を刺す。  【 宇多 喜代子 選 】


   夏休みぶんちやか下手な合奏隊   東京都  野上  卓

「ぶんちやか」とは何なのと思うが、すぐあれだとわかる。さまざまの楽器の音。それが「下手」なのである。夏休みが終わるころにはうまくなるだろう。【 宇多 喜代子 選 】


   抱きし子の足でよろこぶ神輿かな   本庄市  吉田 昭治

抱かれてお祭りに出かけたこの児(こ)はよほど嬉しかったのだろう。抱いた児は足をばたばたさせて意思を伝える。                  【 宇多 喜代子 選 】


  水槽の金魚ひらひら二つの赤がたわむれ遊ぶわれも入りたし
                              泉南市  赤松 寿子

暑さも知らぬげに水槽を泳ぐ金魚。赤い金魚が2匹いるところに華やかさと涼しさが漂い、まるで作者を誘っているように見える。 結句の心の動きに共感を覚えた。
                                    【 栗木 京子 選 】


  親と来て恋人と来て子と来たりはな子に会いにはな子と別れに
                              千曲市  米沢 光人

井の頭自然文化園のはな子。推定69歳の命を閉じた。人生の折々に楽しみを与えてくれたはな子への感謝が伝わる句。            【 栗木 京子 選 】


   帰省子の土産のひとつ夕刊紙   相模原市  芝岡 友衛

都会で刊行の夕刊紙を読みつつ帰って、それも土産としている。活字を愛している一家であることがわかる。少しませた帰省子である。        【 小澤  實 選 】


   原爆忌いま勢いの夾竹桃   波多野市  高堀 道子

原爆忌の句は多く、 夾竹桃(きょうちくとう)と取り合わせた句も少なくないだろう。 にも関わらず、この句は中七で新たな原爆忌の句となり得ている。 
                                    【 正木 ゆう子 選 】


   戦場で送りし爪や敗戦日   東京都  竹本 繁太郎

戦死した時の遺品として故郷に送ったわが爪を、生き永らえてしみじみと見つめる。
                                    【 矢島 渚男 選 】


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