目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   整列のものがなしさよチューリップ   相模原市  奥沢 和子

チューリップは一列に並んで植えられていることが多い。 福寿草や水仙のように固まって話もしたいのだろうに、 人間に操られていることにもの悲しさを覚えている。
                                     【 矢島 渚男 選 】 


   囀(さえず)りは反戦の歌かもしれぬ   松原市  西田 鏡子

春の訪れを告げる鳥の囀りを、 こうした感想で迎える人もいる。 もしも核兵器の戦争が起これば愚かな人間の巻き添えにされて絶滅してしまう鳥たちなのだから。  
                                    【 矢島 渚男 選 】 


    日本の何処かで狼生きてゐる   栃木県  あらゐ ひとし

明治期に絶滅したとされる日本狼。それにもかかわらず、狼の話は絶えない。多分「何処(どこ)かで」 生きているにちがいない。          【 宇多 喜代子 選 】


  目黒川の水面に映るマンションを空ごと崩す大寒の鯉  
                            東京都  鈴木 恵子

都心の川には空とともに高層マンションが映っている。そして建築物の迫力に負けない鯉(こい)が水中に生息しているのだ。下句からは堂々とした鯉の動きが想像できる。                                【 栗木 京子 選 】


   佐保姫と自由の女神密談す   川崎市  多田  敬

春の女神と自由の女神が密談している。 何の話だろう。 時節柄、 新大統領の暴走ぶりだろうかな。                        【 矢島 渚男 選 】 


   追伸に一子卒業したと書く   宍粟市  宗平 圭司

黙ってはおられない子の卒業したという慶事。 書簡での所用もさることながら 最も書きたかったのは「一子卒業」だったのだろう。         【 宇多 喜代子 選 】


   理容師の饒舌眠し木瓜の花   埼玉県  浜名  保

髪を刈りながら、美容師さんがさかんにしゃべりかけてくるのだが、眠いので目を開けてはいられない。木瓜(ぼけ)の赤い花も何だか眠そう。      【 小澤  實 選 】


  母が逝きし雪の朝(あした)をふるさとの熊野烏(くまのがらす)は声しきり鳴く
                              東京都  渡辺  覚

烏は熊野の神様のお使いだという。人が亡くなる時には、しきりに啼(な)いて予告するとも言う。作者の母は熊野の人なのであろう。下の句の表現を整えて取った。
                                    【 岡野 弘彦 選 】


   春待つや退屈さうな河馬の口   松山市  三木 桂子

狭い獣舎で飼育されている河馬(かば)。のそりのそりと動き、ときに大あくびをする。その様子が人の目には「退屈」とうつる。春はそこまで来ている。
                                  【 宇多 喜代子 選 】


   翡翠の父を捨てても母の恋   市川市  吉住 威典

母が父を捨てて恋に走るとは不穏だが、「父の恋翡翠(かわせみ)飛んで母の恋  仙田 洋子」 の本歌取りだろう。 共通の言葉を使いながら、 内容は対照的。  巧みな虚構の恋句である。                    【 正木 ゆう子 選 】


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