目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  素足にて君の1K知る夏のアラームの音ハミガキの味
                            足利市  坂庭 悦子

1Kは部屋の間取り。靴下を脱いで、そこで朝を迎えた。婉曲ながらも的確に状況を伝えているところが見事。目覚まし時計や歯磨き粉などの具体性がいい。君の日常に触れた喜びが、弾むように伝わってくる。          【 俵  万智 選 】


   初恋は浅瀬の小石夕蛍   朝倉市  安陪 良一

浅瀬の小石のような恋、という比喩が愛らしい。はるか昔を振り返ってこその比喩だろう。当時は当時で、大恋愛のつもりだったかも。       【 正木 ゆう子 選 】


  はじめてのデイサービスに出でし母もち帰りたる社会のかおり
                            千曲市  米沢 光人

デイサービスを利用するようになって母の世界が広がった。 結句でやや大げさに「社会のかおり」と表したところに、一歩を踏み出した母への励ましが感じられる。
                                     【 栗木 京子 選 】


  一斉に白く咲きてはまちまちに紅く色変ふ箱根空木
                            生駒市  山村  修

箱根空木(うつぎ)の花は白から紅へと変化してゆき、 白と紅の花が混じり合って咲くところが美しい。丁寧な描写の光る歌である。        【 栗木 京子 選 】


   風折れのほか葱坊主丈そろふ   東京都  望月 清彦

葱坊主(ねぎぼうず)は葱の花のこと。だいたい丈は同じであるが、不運なことに、風で折れてしまっているものもところどころにあるというわけだ。風の強い地の葱畑をしかと捉えた。                             【 小澤  實 選 】


  差しし傘ぶつかりつつも手を繋ぐ いちねんせいの女子ふたり組
                             八王子市  古谷 順子

朝の通学風景。いつも通る仲良しふたり。雨のときでも傘がぶつかりあいながら手をつないでいる。こころ温まる風景とはこういうものだろう。よく観察している。
                                     【 小池  光 選 】


   九条ありて憲法記念の日なりけり   丸亀市  久保谷 幸正

いつしか大切なものを忘れそうになる。戦争と専制政治から解放された憲法記念日。中でも九条こそ世界に誇り得る条文なのにと言う。    【 矢島 渚男 選 】


   しかと切る玉露のしづく青葉の夜   枚方市  加藤  賢

茶好きにはたまらない「玉露のしづく」である。「しかと切る」ことこそが大事中の大事。急須派が減りゆく今こそ味わいたい一句。       【 宇多 喜代子 選 】


   口といふ口ことごとく燕の子   松原市  西田 鏡子

口という口はすべて燕(つばめ)の子のもの。巣から大きな口を出して、少しでも早く少しでも多くの餌を親鳥から得ようとして必死に鳴きたてている。燕の子は口こそが命。                                   【 小澤  實 選 】


  心配ごと何もなけれどわれひとり生きゐるごとく寂しき日なり
                             吹田市  鈴木 基充

こういう寂しさもまた、人間の心が持つ必然である。この寂しさを思い深めるところから、文学や思想や宗教が生まれる。                【 岡野 弘彦 選 】


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