目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   亡き子へと宛てしあまたの文(ふみ)残し入院せし母九十三歳
                              東京都  増山 みさほ

子の生前はもちろん、子が亡くなった後も手紙を書き続けていた母なのかもしれない。入院先へは持っていけないほどの多くの手紙。93歳の母の思いが胸に沁(し)みる。                                 【 栗木 京子 選 】


  雨の夜一声残し出で行きし猫は戻らず十年経ちぬ
                            狭山市  奥薗 道昭

あれは冷たい雨の降る夜であった。出て行った猫が帰らず、いつしか10年。どこへ行ったものやら、いまでもふっと想うことがある。わが子のようにいい猫だった。
                                     【 小池  光 選 】


   夏の池いつも何かが輪を作る   前橋市  深沢 佳子  

まいまい、みずすまし、池底の泥鰌(どじょう)、飛んできた病葉(わくらば)、その他池の面に輪を生む諸々(もろもろ)。それが「何か」をあれこれ想像する。
                                  【 宇多 喜代子 選 】


  聞き飽きた暑い暑いともう言うな   西条市  平井 辰夫

まことに率直な句で、本人も連日の暑さにゲンナリしている状態とよく分かる。でもね、お互いに弱い人間であることを確認する挨拶(あいさつ)ですから、いいのではないですか。                             【 矢島 渚男 選 】


  叔母の死を嘆く部分と今日の些事こなす部分に分かれる心
                              池田市  今西 幹子

非日常と日常が同居する心が、うまく描かれている。 こんな時にも些事 (さじ) を こなせる自分。 心が二つあるような、不思議な違和感も伝わってくる。
                                     【 俵  万智 選 】


  水撒けばみづの匂ひを知るごとく黒揚羽くる苑の方より
                              市原市  井原 茂明

意思を持っているかのように飛んでくる黒揚羽。第二句第三句の描写が印象的だ。誰かの魂かもと思わせる力がある。              【 俵  万智 選 】


   残酷な歌詞もありけり踊り唄   匝瑳市  椎名 貴寿

踊り唄や幼児の童話、どちらにも「残酷」なところがある。人身御供(ごくう)や人身売買など。美しいばかりではない、そんな古人からの信言か。
                                  【 宇多 喜代子 選 】


   両足の揃ひて止まる敗戦忌   福井市  村田 淑子

年配者にとって「敗戦忌」への思いは格別。 自ずと姿勢を正す形に立ち止まる。 終戦忌ならぬ敗戦忌であるところ、一入(ひとしお)に切実である。
                                  【 宇多 喜代子 選 】


  戦争が無ければどんな人生を二人の兄は歩みしならん
                              奈良県  山田 榮美子

この簡潔で切実な作者の願い。 二人の兄を戦いで死なせた女性の嘆きを、われわれは身にしみてふたたび思い返そう。               【 岡野 弘彦 選 】


  吾の名も忘れし母がくりかへし村の祭りの近づくをいふ
                            川西市  越智 照雄

かなしい歌である。 しかし、ふしぎな温もりもある。 わが子の名前を忘れても、若き日の村祭りの記憶は鮮明だ。 老い行く母。            【 小池  光 選 】


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