目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
[288]  [289]  [290]  [291]  [292]  [293]  [294
   万力の上にも一つ鏡餅   大牟田市  田頭 俊博

力仕事に欠かせぬ万力。歳の神の来臨にふさわしいところに置く鏡餅を「万力」の上にも置いた。田頭さんにとっては平素世話になっている大事な道具である。                         【 宇多 喜代子 選 】


   菱形に北海道の凍てにけり   桶川市  小林 茂之 

天気図からの発想か。「菱形の」であったらさほどでもなかったと思われるほど、上五の「に」は効いている。凍てがゆるまず氷のように菱形に固まったのだ。北海道全土の寒さをよく伝えている。      
【 宇多 喜代子 選 】



   枯野より便りありけり会ひに行く   上尾市  中野 博夫

かつて親密であったが、別れた後会うことが永く無く、すでに亡くなったと思っていた人からの便り、と読むことができる。生存がうれしくて、即会いに行った。「枯野」とは、枯れきった死の世界の象徴か。   【 小澤  實 選 】


   12月8日の瀞(とろ)の底知れず   東京都  望月 清彦

年毎のこの日を特別な思いで迎えるのは、1941年12月8日が日米の開戦日であることを知る人に限る。不安と複雑な感慨が去来する。
                              【 宇多 喜代子選 】


   山眠り山彦ひとり起きてゐる   千葉市  多賀谷 朋子

山彦といえば、山の神や山霊というよりずっと親しい感じがする。人間臭くさえあって、どこでどんなふうに冬を過ごしているのだろうと、想像に誘われるのも楽しい。                         【 正木 ゆう子 選 】


   みな佳き名さづかりしかな賀状書く   観音寺市  藤岡ひろみ

字の持つ意味に子の将来の幸せを託して名付けた名。そんな名を吟味しながら賀状を書く。手を使い相手のことを思いつつ書く賀状だからこそ湧く「さづかりし」の感慨。                    【 宇多 喜代子 選 】



  侘助(わびすけ)や文字に声ある母の文   東京都  望月 清彦

風邪をひかないようにと書いてあれば、そう言う母の声が聞こえる。間に理性の挟まる余地のない母ならではの句。息子ならでは、とも言えるかもしれない。                            【 正木 ゆう子 選 】


   月山に開く障子を貼りにけり   鶴岡市  広瀬  弘

この障子を開け閉めするたびに月山を目にする。「障子を貼る」という秋の生活行事が、やがて来る冬への覚悟を静かにうながす。冬を迎える月山の山容が見えるよう。                   【 宇多 喜代子 選 】


   間違いの電話も声や秋の暮   千葉県  菅谷 貞夫

間違い電話も声のうち。人恋しさのつのる夕べには、見知らぬ人の声さえ懐かしいというのだ。間違い電話にも苛立つような生活を送る身には、反省させられる奥床しさ。                     【 正木 ゆう子 選 】



   冷飯もまた新米の旨さかな   東京都  平山  仁

新米で冷飯の句は初見。新米を詠むなら炊きたて、という常識を破っただけで十分に面白いから、あとはいかにシンプルに詠むか。ゆったりとしたリズムがいい。                           【 正木 ゆう子 選 】


カレンダー
01 2025/02 03
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28
ブログ内検索
最新コメント
[12/31 越中之助]
[12/31 越中之助]
[12/10 ?]
[10/30 読売読者]
[09/06 榎丸 文弘]
最新トラックバック
バーコード
フリーエリア
ゲイ無料総合サイト
カウンター