目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   潔く夕立の中に入るりにけり  東京都  杉中 元雄

 しばらくの待機で上がるのが夕立なのだが、もう待てないと決めて、エイッと雨の中に出て行った。決心のほどうかがえる句だ。 【 宇多 喜代子 選 】



   熱帯夜一時か一時半か打つ   東京都  米倉 ひさき

寝苦しい夜。柱時計がボンと鳴る。一時か。それとも「半」の音か。誰もが経験したことのある真夜中の小さな疑問。普通なら言いもしないのだが、それを言うのが俳句。                   【 正木 ゆう子 選 】



   梅干の一つ一つを裏返す   狭山市  岡 秀雄

特別のことが書かれているわけではないのに、一読すっと胸に落ちる。まことに単純な句だが、誰にも書けそうだと思わせるところがこの句の力となっている。                           【 宇多 喜代子 選 】


   沖縄忌天から涙のやうなもの   筑紫野市  和田 あきお

天からも地からも涙が溢れてくる。 句作の契機としては、この日の雨だったのかもしれない。「沖縄忌」は6月23日。切ない。 【 宇多 喜代子 選 】

 この句を読み、毎年6月23日は雨が降ってほしいと思いました。
  ( それも、ほんの一、二滴・・・。 )



   母となりても同じさみしさ蛍狩  四日市市  長谷川 光代

家族がいても、華やかに見えても、誰の心にも根底には寂しさがあるものなのだろう。しかし深く読めば、その寂しさの中にこそ真の安心があると解釈することも出来る。                     【 正木 ゆう子 選 】


   海の石拾ひて遠き過去も夏   長野市  上野 ただし

この海には遠い昔に一度来たことがある。あの時も夏だった、というのだ。
二つの夏に挟まれて過ぎた作者の歳月。海にとってみれば一瞬のような歳月。                           【 正木 ゆう子 選 】



   卓上に鋏残して薔薇匂ふ   山形市  大滝 松太郎

鋏はまだ濡れているのだろう。切られた茎や葉が散らばっており、匂いの主である薔薇は運ばれて目の前に無い。無いから一層芳しい。
                              【 正木 ゆう子 選 】



   夫逝きて不思議な夏の訪れし   朝霞市  村田 登美子

大切な人がいなくなっても巡り来る季節。 詠まれているのは、悲しみだけではない、とまどいと驚き。 不思議な新しい世界に、放心したように向き合う作者が見える。                      【 正木 ゆう子 選 】


   蜜豆の男ル・モンドを読む女   野田市  松沢 龍一

男は蜜豆を食べ、女は新聞を読んでいる。それもフランスの夕刊紙「ル・モンド」だというのだ。ふしぎなカップルを描いている。物語が、この場面から始まりそうだ。                           【 小澤  實 選 】


   なめくぢり月の光を引き進む  流山市  久我 渓霞

「なめくぢり」とはナメクジのこと。 ぬるっとしたナメクジの銀色、這った後に残る痕跡も銀色。不快害虫のナメクジをかくも美しくとらえた句はないだろう。
                             【 宇多 喜代子 選 】


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