目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  あれはもう含み笑ひといふやうな白木蓮の大きな莟
                        青梅市  諸井 末男

開花を間近にひかえ、ぎりぎりまで膨らんだ白木蓮の莟(つぼみ)。「含み笑ひ」という比喩が冴える。思い切り笑う瞬間、それが開花だ。「莟」と「含」の字形の相似も面白い。                  【 俵  万智 選 】


  垂直に蓄えてきし知識さえ地震(ない)に書籍とともに崩れる
                          松戸市  東   洋

「垂直に蓄えてきし知識」は知識偏重になりがちな私たち現代人の驕りなのだろう。地震によって知識の脆(もろ)さが露見したのだ。【 栗木 京子 選 】


今週の特選句
   淋しくて男は約束ばかりする      ( 福岡県 谷やん 75歳 ) 
     なんだかものすごく身に染みます・・・・・・特選!


ほかに、
  指切りを信じ子どもは歯科へ行き ( 東京都 中村  篁 70歳 )
     母さんあの時、僕を騙したんだね・・・・・・。

  約束をしたのに女房先に逝き   ( 岐阜県 小川 茂基 80歳 )
     奥様が初めて破った約束でしたね・・・・・・。
   
  何となく約束もせず共白髪    ( 和歌山県 中村 武雄 67歳 )
     何となく、ってのもいいもんですね。

  故郷(ふるさと)にあの指切りを置いたまま
                    ( 三重県 大久保 隆紀 70歳 )
     だから帰り辛いけど、帰ってもみたい。 ね。



  級長の役を今日よりするといふわが童よ飯はこぼすな
                     大岡 博(おおおか ひろし)  

子どもは大人の種子。すでにその人のおもかげを宿す。歌人の大岡博は詩人の大岡信(まこと)の父。ここに描かれているのは小学校に入学したときの大岡信である。級長になることをひそかに喜びながら一言いいたい。ご飯はこぼさずに食べなさい。             【 四季 ・ 長谷川  櫂 選 】



   どの鳶も右廻りなり春の空    いわき市  斉藤 恵子  

たしかにそうだ。長閑な時間にこそ見える春の鳶の生態。春の輪は大きい。3月9日の消印での投句。作者は如何かと案じる。 【宇多 喜代子 選】

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   海へ向きはた山に向き麦を踏む   丹波市  土田  勝

畝(うね)をたてて麦を蒔き、早春に麦踏をする。往ったり来たりを繰り返す。これこそがこの国の麦踏。               【 宇多 喜代子 選 】

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今週は、この「麦踏」の句が一番好きでした。震災が無ければ、鳶が飛び回るのどかな景色が今日も続いていただろうに・・・と、心が塞ぎます。


   赤子とはいのちそのもの春の雪   東広島市  児山 順子

どんな時であっても、赤ちゃんの存在には、かけがえのない力を感じさせる。うかうかと「いのち」と書くと軽くなるが、この「いのちそのもの」にはそれがなく、祈りに感じられる。                   【 宇多 喜代子 選 】

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   被災地で生まれし嬰(やや)に春を見た  
                        寝屋川市  大西 嘉弘

被災地で赤ちゃんが生まれた。未来への希望が一つ灯された。【矢島 選】


  非常食のつめたき粥をわが口にあたためて母に口移すなり
                           旭 市  山田 純子

地震の被害やその影響による停電によって、我々の生活は大きく変わった。年老いて体力の無くなった母のための介護に、最新の心をつくす様子が伝わってくる。                         【 岡野 弘彦 選 】

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 乾パンに咽(むせ)びて水を流し込む今日を生き抜くそれだけのため
                           岩手県  小田 わか

岩手県在住の作者。東日本大震災によってライフラインが断たれ、非常食の乾パンを食べて命をつないでいる。 「今日を生き抜く」の切実さの前に、頭を垂れるのみ。                     【 栗木 京子 選 】

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  望郷を言はざる孫が三日ほど帰りくるとふ地震(なゐ)ゆりし後
                          群馬県  真庭 義夫

重い被災地の体験を詠んだ歌ではないが、この若者の気持ちよく分かる気がする。そして孫を待つおいの心の動きもまた。     【 岡野 弘彦 選 】



    さまざまの事おもひ出す桜かな    芭蕉

2004年4月1日、「四季」はこの句からはじめた。大震災で1か月中断、再開するに当たってまたこの句から始めたい。惨事を経てふたたび唱えると、心に去来するものは7年前の春とは異なるだろう。 詩歌は人とともに生きている。                      【 四季 ・ 長谷川  櫂 選 】


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読売新聞は、昨日(13日・水)から、この「四季」、マンガ「コボちゃん」、そしてテレビの「番組欄」が震災前の定位置に戻りました。新聞を開いたときに 「あるべきところにあるべきものが無い」 不安から、やっと 開放された思いでいます。 そう! マスコミは新しい日々に向かってスタートを切ったようです。私も、そして「あなた」も、新しい明日に向かってスタートを切りましょう。

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■コボちゃんがおはようと言う元の位置  東京 中村 篁(たかし?)■

11.04.17付の「よみうり時事川柳 (長井好弘 選)」に載っていた作品です。私と同じ目線で一日のスタートを迎える人がいることに感動しました。
           



今週の特選句
   サクラサク電卓叩いて泣き笑い  ( 三重県 井上 速義 61歳 ) 
     めでたいけど金かかるなぁ・・・・・・でも、特選!


ほかに、
  食卓で勉強裁縫腕相撲       ( 北海道 新田 直子 46歳 )
     たしか昭和はそうでした。

  食卓の静けさ倍化チンの音         ( 東京都 馬笑 58歳 )
     響きますね。
   
  横文字の料理並んで父不機嫌 ( 岡山県 金子 悠二郎 63歳 )
     明日はシオ・ジャケとミ・ソシルにするよ。

  卓台に望まぬ紙が置いてある  ( 神奈川県 富田 雅之 43歳 )
     え? 望んでたんじゃないの?




大金持ちが大邸宅を建てたというので、友人が遊びに行った。
田舎も田舎、周囲に店もなければ、遊ぶところもない。
暮らすにはさぞかし不便だろうと、友人が聞いた。

 「どうして、こんなところに家を建てたんだい。
 便利な都心の一等地に、いくらでもいい家が買えるだろうに」

大金持ちが答えた。

 「愚問だな。だから貧乏人は困る。
 召使いが何のためにいると思うんだ?」
                        【 ’11.04.21 週刊新潮 】



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