目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  オブラート春の玉葱腐りゆく二つに切れば生きるみどり芽
                        宮城県  工藤 重雄

表面は腐っていても、中に新しい芽が育っていることがある。食べる人間の側の理屈とは違う生命力が、まぶしい。                 【 俵  万智 選 】


  捨てようかカセットテープ思い出の聞きたい声がつまった化石
                         横須賀市  小室 房枝

確かに録音はされているのに、聞く手立てがないのだろう。化石の比喩に、もどかしさや、どうしようもなさが凝縮されている。             【 俵  万智 選 】


   だれかにねたこ見せたいなだれにしよ
         東京都 府中市立府中第十小学校1年 牧田  遼

たこあげのたこを、自分で作ったのでしょう。がんばって組み立てて、上手にできたらじまんしたくなりますよね。一句のはじめに「だれかにね」と言って、最後(さいご)に「だれにしよう」と重ねていることで、見せたくてたまらない気持ちが表現されています。              【 ’15.03.14 KODOMO俳句 高柳 克弘 選 】


今週の特選句

  天井よ俺の暮しはどう見える      ( 大阪府 磯野 不二夫 65歳 )  
     そして我はじっと手を見る。せめて特選を。


ほかに、
  天井のアグネスラムが降ってきた    ( 島根県 石見んちゅ 53歳 )
     わ! ラムが覆い被さって・・・・・・ラッキー!


  捨てられぬ天井裏にある若気      ( 埼玉県 関根 一雄 62歳 )
     青春の重みで、天井が抜けそうだ。

  俯せに変えた乱歩を読んでから     ( 大阪府 田中 良典 65歳 )
     屋根裏には、お気をつけあそばせ。

  訪れた母校天井低く見え        ( 大阪府 宮崎 研之 60歳 )
     校庭も、もっと広かったはずなのにな。

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   ■
募集お題 「 工事 」
   ■ 「お題」にそった川柳を、はがき1枚につき1句から5句まで。
   ■ 住所・氏名(ペンネームの場合も必ず本名を)・年令・電話番号・
      お題を明記してください。
   ■ 締め切りは3月18日(消印有効)です。
      なお応募作品は返却いたしません。
      また、同じ句を他誌に投稿する二重投稿は厳禁です。
      特選句には賞金を差し上げます。
   ■ ご記入いただきました個人情報は、
      本欄への掲載と賞金発送にためにのみ使用いたします。
   ■ 宛先 〒102-8008
      千代田区紀尾井町3-23 週刊文春「川柳のらりくらり」係


   漣の形を残し薄氷   埼玉県  小町 季生

薄く張った氷の表面に漣(さざなみ)の縞目(しまめ)が残っているという句。 風に揺れていた水面が、急速に氷(こお)ったのであろう。言葉に無駄がなく、水から氷までの過程をよくとらえている。                     【 宇多 喜代子 選 】


   ふらここで待っててきっと探します   郡山市  高木 茂子

公園の遊園地で待っていてください。必ず探しに行きますから。「ふらここ」はブランコで春の季語だから平和な光景に感じられるが、被災後の行方不明者の捜索なのだという。                               【 矢島 渚男 選 】


   噴煙に風読み野火を放ちけり  熊本県  田村 三渓

阿蘇の噴煙であろう。風向きを煙で判断して、牧草地を焼き、春を迎える山焼きの行事である。豪快な句柄が阿蘇山にふさわしい。      【 矢島 渚男 選 】


  枡(ます)こぼれ秤(はかり)こぼれる針魚(はりお)かな
                    さいたま市  薄井 逸走

針魚はサヨリ。 こういう情景を見られるのは市場だろうか。 透き通った銀色の肌が目に浮かぶ。食欲をそそる一句である。             【 正木 ゆう子 選 】


  食ごとにひと口ずつの飯(いひ)をあまし陰膳とする無期受刑者
                            仙台市  長岡 義宏  

毎食ひと口の飯をとり分けて陰膳として祈りをこめる、無期受刑者と隣り合わせて生きる生活。 祈りの真意を知るすべはないが、つつましく深い隣人の思いに共感する作者。                             【 岡野 弘彦 選 】


  野地蔵の陰より招く人ありて森に吸はるるスピード違反
                         埼玉県  小林  実

四句目までは民話の世界に誘われるような、のどかな情景。 だが結句でスピード違反の取締りとわかる。オチの決まった一首。          【 栗木 京子 選 】


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