目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   街道の土産は同じ草の餅   柏市  中野 英則

この句を読めば、だれもが「そうだそうだ。わたしも買ったよ」と思い出すだろう。草の餅は全国のあらゆる土産物店にある春の目玉商品。    【 宇多 喜代子 選 】


   みどり児の手が届きたり吊し雛   入間市  角貝 久雄

吊(つる)し雛が盛んになってきた。揺れるし、いろいろなものが吊されているし、幼児には興味津々のお雛様だから、どうしても触りたくなる。 ようやっと手が届いた。
                                    【 矢島 渚男 選 】


  しんしんと内なる力照りいでて真夜もさくらの花あかりする
                           垂水市  岩元 秀人

この季節にはやはり、力のこもった桜の歌に心が引かれる。照明も消えた夜更けになって、桜はみずからの持つ明るさで闇の中でもほの白くかがやいて見える。 
                                    【 岡野 弘彦 選 】


  出来立てのうぐいす餅は手の中で小鳥のごとき危うさを持つ
                          池田市  今西 幹子

柔らかくて、あたたかくて、ちょっとした力にもつぶれてしまいそう・・・・・・。小鳥の比喩、的確さに加え、慈しむ感覚のあるところが、とてもいい。  【 俵  万智 選 】


  麦飯に似凝(にこご)りのせて食む母の疎ましかりき思春期のわれ
                             藤枝市  北泊 あけみ

生命力のかたまりだった母。食事するのもただただ逞(たくま)しい。こういう母のふるまいを疎ましく思った思春期。今はみな過去。          【 小池  光 選 】


  出来たとは言はず息子は畏(かしこ)まり授かりましたと親の顔する
                             瑞穂市  渡部 芳郎

親に子供が出来たことを報告する場面。厳粛に、きっと正座してこう告げたのだろう。孫が出来ることも嬉(うれ)しいが、息子がちゃんと成長してくれたことが嬉しい。   
                                    【 小池  光 選 】


【 歌のなかの人々 2   小島 ゆかり 】

  「前略」を「全略」と書き以後空白そんな手紙を送りたい春  佐藤 通雅

 「前略」という言葉をはじめて使ったのは、大学時代に借りていた部屋の大家さんへのお礼状だった。卒業して、まもなく社会人になる気負いがあったにちがいない。どのような書き出しがよいのかさんざん迷ったあげく、「前略」。なんとなく大人になった気がした。あれからまもなく40年になる。お礼にお詫(わ)びに近況報告に、どれほどの「前略」を記したことか。
 しかし「全略」とは・・・・・・。 いいなあ、これ。 メール時代の現代の若者にだって、「○○様 全略 △△より」 と送信、返信したいときがきっとあるだろう。悲しいとき面倒なとき、あるいはうれしくて言葉にならないとき。この歌の作者はどうだろう。もしかしたら、「空白」 をだれかと分かち合いたかったのかもしれない。春はふと、そんな気分になる。           【 15.04.14 読売新聞 「 短歌あれこれ 」 】


今週の特選句

  古傷は許そう旦那の背が丸い      ( 北海道 清野 最也 82歳 )  
     それが世界平和につながるのです。 特選。


ほかに、
  思い出となって旦那を一人占め        ( 徳島県 けいやん 72歳 )
     もう、ずーと一緒ですね。


  旦那とは腐れ縁でも縁は縁        ( 北海道 新田 直子 50歳 )
     腐ってるけどね。

  旦那待つ今日も湯豆腐煮えたぎる     ( 山形県 齋藤 トヨ 68歳 )
     こりゃ本宅でしょうか、御妾宅でしょうか。

  引退も出来ず旦那の座に疲れ     ( 北海道 佐藤きよひろ 80歳 )
     好きで居座ってる訳じゃないんだよ。

  アメ横で旦那と呼ばれ筋子買う       ( 神奈川県 三谷  誠 67歳 )
     あぁ、ダンナは筋子ぐらいがちょうどいい。

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   ■
募集お題 「 ピアノ 」
   ■ 「お題」にそった川柳を、はがき1枚につき1句から5句まで。
   ■ 住所・氏名(ペンネームの場合も必ず本名を)・年令・電話番号・
      お題を明記してください。
   ■ 締め切りは4月15日(消印有効)です。
      なお応募作品は返却いたしません。
      また、同じ句を他誌に投稿する二重投稿は厳禁です。
      特選句には賞金を差し上げます。
   ■ ご記入いただきました個人情報は、
      本欄への掲載と賞金発送にためにのみ使用いたします。
   ■ 宛先 〒102-8008
      千代田区紀尾井町3-23 週刊文春「川柳のらりくらり」係


   あはれ知る武士かなし実朝忌   中村 寛明

源実朝は藤原定家に師事して優れた歌の数々を残したが、甥(おい)に暗殺されて死ぬ。彼を「あはれ知る武士(もののふ)」と一言で詠って秀逸である。 
                                    【 矢島 渚男 選 】


   山眠るとろりとろりと茶を注ぐ   むつ市  畑中 継雄

山河も生き物もひっそりと背を丸めて籠っている。雪に覆われた屋根の下で人々が茶を飲みながら春を待っている。「とろりとろり」 が、冬眠状の生態をよく言い表している。                                 【 正木 ゆう子 選 】


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