目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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 夕つ陽はいま胎内にともりゐむまぐはひ終へし鳩そらを飛ぶ
                          明石市  中條 節男

原初の時代から、鳥は常に人間にとって生命力の指標だった。日本神話の造物主いざなぎ・いざなみの二神に婚(とつ)ぎのわざを教えたのも、鶺鴒(せきれい)であったという。この一首、そうした原初の情念を思わせる。交接を終わった雌鳩が明石海峡、淡路島を眼下にして夕映えの空を歓喜に燃えながら乱舞している                   【 岡野 弘彦 選 】

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読まざりし「魔の山」を老いて病む日々にとどこほりつつ読みをはりけり
                           松戸市  関根 賢人

若いときに読もう読もうとして読まないでしまった書物が誰にでもあると思う。
老境になりしかも病を得たとき、思い出してはそれを手にする。読みはじめたがすらすら読めるものでもなかった。しかし何とか読了し、人生の宿題の一つを果たした。こういう読書というものがある。こころうたれる。【 小池 光 選 】 

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 父と母次々入浴介助して体中から玉の汗噴く
                        泉佐野市 河合 陽子

高齢者の入浴介助。 一人分だけでも大変なのに父と母を次々に介助するのは重労働である。体力を使うし、精神的にも疲れる。だが作者は俯(うつむ)いてはいない。体から吹き出る汗を「玉の汗」と詠んでいるところがじつに健やかに感じられる。父母と作者の身も心も清める汗。汗の美しさに感銘を受けた。                         【 栗木 京子 選 】

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 幾つかのユリの蕾は幾つかのユリとなりたり花瓶に生きて
                        さいたま市  小野 剛志
  
蕾から花となり、人の目を楽しませてくれるユリ。が、花を咲かせるのは、本来は命のリレーのためだ。そこから途切れている事を知らないままの美しさしは、空しくもあり、また切なくもある。 リズミカルな上の句がユリの無邪気さを、倒置法で言いさしの結句がその運命の残酷さを、巧みに表している。
                                【俵 万智 選 】



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