目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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【 歌のなかの人々 2   小島 ゆかり 】

  「前略」を「全略」と書き以後空白そんな手紙を送りたい春  佐藤 通雅

 「前略」という言葉をはじめて使ったのは、大学時代に借りていた部屋の大家さんへのお礼状だった。卒業して、まもなく社会人になる気負いがあったにちがいない。どのような書き出しがよいのかさんざん迷ったあげく、「前略」。なんとなく大人になった気がした。あれからまもなく40年になる。お礼にお詫(わ)びに近況報告に、どれほどの「前略」を記したことか。
 しかし「全略」とは・・・・・・。 いいなあ、これ。 メール時代の現代の若者にだって、「○○様 全略 △△より」 と送信、返信したいときがきっとあるだろう。悲しいとき面倒なとき、あるいはうれしくて言葉にならないとき。この歌の作者はどうだろう。もしかしたら、「空白」 をだれかと分かち合いたかったのかもしれない。春はふと、そんな気分になる。           【 15.04.14 読売新聞 「 短歌あれこれ 」 】


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