目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   昭和の日父は水漬(みづ)くか草むすか   神奈川県  中島 やさか   

「囀(さえず)りの森に闖入(ちんにゅう)してひとり」 「園丁のシシフォスのごと落ち葉掃く」など意欲的で清新な作品を寄せられた中島やさか氏を推す。平成が震災の時代とすれば昭和は戦争の時代であった。 この句は「海行かば」の歌を敷いて、戦争へ行ったまま死に場所もわからず遺骨も帰らないと、父を詠(うた)って衝撃を与えれくれた秀句である。                     【 矢島 渚男 選 】
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   友の子も吾子も頼もし運動会   京都市  島野 紀子

子どもが大勢の前で、その体力のほどを競い合う最初の機会が運動会だろう。  そんな場で、お母さんは勝敗ではなく、子が自分の手を離れたところで走ったり飛んだりするようになったことを 「友の子」 をともに視野に入れて 「頼もし」 と思っている。どの子も健やかであれ、と祈る気持ちで選んだこころ和む人事句である。
                                   【 宇多 喜代子 選 】

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   雪が立ち雪にたつ白鷺になる   鹿角市  石川 ゆみこ

雪が立つ、という謎のような言葉の魅力。 「雪が立ち」と 「雪に立つ」の、助詞を違えたリフレインの効果。 最後に、それが白鷺だと分かる映像の美しさ。しかもそれは白の中に白を点じた真っ白な景である。 俳句にはさまざまな良さがあるが、純粋に美しい、こんな俳句があっていい。さらにこの句は正確な写生でもある。
                                    【 正木 ゆう子 選 】

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   雷鳥の子に初めての人のこゑ   川崎市  沼田 広美

高山に住む雷鳥の雛(ひな)に、人間の声が届いている。親鳥は「もっとも危険な、決して近づいてはならない生き物」と指導しているだろう。しかし、雛にとっては、何やら楽しげな声として聞こえてほしい気もする。人の立場から詠んでいるのではなく、雷鳥の子の立場からであるのがいい。ひたすら無垢(むく)なものが描き出されている。                                   【 小澤  實 選 】


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