目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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日向ぼこ中に特攻ふたりゐる   千葉市  小林  昭

幾人かが日向ぼこをしている。 まことにのどかな光景だ。 その中に、かつて特攻の兵士であった人がいる。 なんらかの理由で命を捨てずに生き得た人だ。 ことさらな感慨を述べずに多くを語っている。               【 宇多 喜代子 選 】


   今日の雪昨日の雪と違ふ音   塩尻市  神戸 千寛 

この雪の降る音は耳に聞こえる音ではなく降雪の気配。その微妙な違いを聞きわける。                                【宇多 喜代子 選 】


   鳰(にお)浮くや何かしてきた顔をして   流山市  久我 渓霞

水辺の景を愛(め)でるだけでなく、カイツブリの貌(かお)に、しかも表情に目を留めるとは観察の達人。「何かしてきた顔」が面白い。小さな水鳥にも、水中には水中のドラマがある。                           【 正木 ゆう子 選 】


  今日もまた泣かされてきた末の娘に父は電車の絵を画いてやる
                           東京都  菱山  茂

父親らしい微妙な距離感。女の子があまり喜ばなそうな「電車」と言うのが、不器用さをよく伝えている。                       【 俵  万智 選 】


  わが老後阪神淡路大震災に大きく狂う人に言はねど
                         川口市  広田 絹子

阪神淡路大震災から20年が過ぎた。作者は当時神戸市在住で、住居のマンションが崩壊したことが歌に付記されている。今だからこそ言葉にできる深い嘆きが伝わる。                               【 栗木 京子 選 】


  目ざむれば今朝も此岸に居ることのうれしかりけり身を正すなり
                           北九州市  田浦 サチ子

朝、目がさめて、ああ今日もこの世で健やかな一日の命を生きることができるのだと実感する時の、充実感と感謝。                  【 岡野 弘彦 選 】


   寒卵呑ませ仔牛と別れけり   津市  中山 道春 

寒卵を呑むと精が付くのは、人間も仔牛も同じ。呑ませてやって、いつくしみ育てて来た仔牛と別れるのである。 寒い時期、体調をくずすなよ、という思いもこもろう。
                                     【 小澤  實 選 】


   おふくろを越えたる妻の煮大根   佐野市  桑原  博

妻の煮た大根の味わいが、母のものを越えたと感じたという。妻との暮らしが長く、なじんで来ているわけだ。妻への愛の句でもある。       【 小澤  實 選 】


   口閉ぢて戦ふごとく大根摺(す)る   伊豆の国市  菊池 裕子

大根を卸すとき、確かにこんな顔をしているかも。たかが大根卸しに、ついつい没頭しているのだ 。そんなにムキにならずとも、と 自分を面白がっている自分がいる。 
                                    【 正木 ゆう子 選 】


   餌づけ鴨つひに投網を打たれたり   熊本市  野崎 一雄

餌付けをして馴れてきた鴨(かも)を、投網で捕獲するという古来の猟法であろう。こうした愉快な猟法は残しておきたいもの。            【 矢島 渚男 選 】


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