目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   木蓮の下で話題の変りけり   多摩市 高野 伸二   

 立ち話、あるいは通りがかりか。 たまたま木蓮(もくれん)の下で話題が変わった。それがまるで木蓮のせいであるように作られているのが面白い。木蓮の存在感を思えば、頷(うなず)ける。                       【 正木 ゆう子 選 】


    馬鈴薯の多数の花に願い事   帯広市  吉森 美信

星に願うのではなく、菫(すみれ)でも桜でもなく、馬鈴薯(ばれいしょ)の花に願うとは逞(たくま)しい。北海道の一望の馬鈴薯畑なら、力強く願いが叶いそうだ。
                                    【 正木 ゆう子 選 】


   やみくもにがうなはがうな越えきたる   東京都  望月 清彦

やどかりを飼っているが、すべてが活動的なのではない。中の一匹だけが元気で、他のやどかりの上を乗り越えてくる。やみくもは進路の定まらぬさまも感じさせている。                                 【 小澤  實 選 】
        
    【注】 がうな : 春の季語である「寄居虫(ごうな:ヤドカリの意)」の古名。 


  書を読めり忘れし文字をみつめつつ雨垂れ石を穿つごと読む
                            奈良県  杉本 節子

これも思い深いよい歌だ。90を過ぎた私も、時にこの文字は何と読むのだったかと思う。下の句に思いがこもっている。                【 岡野 弘彦 選 】


  丸くなり四角に入り三角となって消え行く宅配のピザ 
                       東京都  武藤 義哉

上の句の言葉遊びが、楽しい。 結句の答えが「なあんだ」では、つまらないが、この結句なら 「なるほど!」である。                  【 俵  万智 選 】


   一山は初音のなかにありにけり   霧島市  久野 茂樹

「初音」は鶯(うぐいす)のその年のはじめての鳴き声のこと。山中にいて、これを耳にした。鳴き声が山全体に聞こえるように伝わっていく。聞こえるのは鶯の声のみ。
                                   【 宇多 喜代子 選 】


   石舞台盗まれもせず春嵐   泉佐野市  米谷  茂

明日香村の石舞台は古墳時代のもの。盗掘には遭っても、巨大な本体を盗む者はいない。なにしろ岩の総重量は2300㌧だそうだ。       【 正木 ゆう子 選 】


   飼ひ猫の急に老いたり春落ち葉   川崎市  沼田 広美

元気だと思っていた猫が急に老いてしまった。 折りから春の落ち葉も降ってくる。 
春落葉(はるおちば)は常緑樹のもの。 春はいい季節と考えられているが、こんな残酷な一面もある。                         【 小澤  實 選 】


  オブラート春の玉葱腐りゆく二つに切れば生きるみどり芽
                        宮城県  工藤 重雄

表面は腐っていても、中に新しい芽が育っていることがある。食べる人間の側の理屈とは違う生命力が、まぶしい。                 【 俵  万智 選 】


  捨てようかカセットテープ思い出の聞きたい声がつまった化石
                         横須賀市  小室 房枝

確かに録音はされているのに、聞く手立てがないのだろう。化石の比喩に、もどかしさや、どうしようもなさが凝縮されている。             【 俵  万智 選 】


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