目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  病む母の手元に秋の光さし折り紙はもうツルになれない
                        仙台市  石川 初子

「母はもうツルを折れない」という表現では、あまりに切ない。ツルになれない折り紙の無念、という形で表現した細やかさに、心を打たれた。    【 俵  万智 選 】


  二十歳の時三島が死んだ秋の樹は深く根を張り老木になった
                            横浜市  森  秀人  

三島由紀夫が自決してはやくも45年。 作者は二十歳(はたち)の青年だった。 若木は成長し、大地に根を張り、やがて老木になった。    【 小池  光 選 】


   好きだった人の名刺や冬隣   東京都  徳山 麻希子

片思いであったことがなんとなく伝わる詠み方である。名刺が唯一の思い出の品なのだ。名刺の整理をしているところかもしれない。        【 正木 ゆう子 選 】


   明月の欠けゆく夜夜を仰ぎ癖   枚方市  加藤  賢  

十六夜(いざよい)・立待・居待・伏(ふし)待と欠けてゆく月を仰ぐ夜夜。 大気が澄んで月の美しいその頃から、 やがて一月後の十三夜を過ぎ、 空はしだいに冬の星座の出番となってゆく。                     【 正木 ゆう子 選 】


   新米の裾分けのまたお裾分け   青梅市  増田  正

新米のお裾分けをさらに分けてもらった。 ほんの少しだけだけれど、うれしい。 その分、たくさんの人が新米の恩恵を受けている。          【 小澤  實 選 】


  野仏が野に咲く花にかこまれる特定外来生物の花
                        仙台市  岩間 啓二

繁殖力が強く、生態系にも影響を与えるという特定外来生物。昔ながらの、ほっとするような風景から一転、まがまがしい下の句にハッとさせられる。この落差が、現代なのだろう。                             【 俵  万智 選 】


   思ひ出す妻の放屁(ほうひ)やそぞろ寒   北九州市  安部 宗伯

奥さんは他界されているのであろうか。 妻が屁をして笑い合ったことなどを懐かしく思い出しながら、そぞろに寒いという。笑いによって侘(わ)びしさが増幅されている。
                                    【 矢島 渚男 選 】


   丈なして役に立ちたい泡立草   埼玉県  小林 夕里子

泡立草だって役に立ちたいとは、なんと優しい句。 思いを代弁した面白さだけでなく、「丈なして」が美しい表現である。今日は全国の泡立草が輝いて見えそう。
                                   【 正木 ゆう子 選 】


   七十年先も咲くのか曼珠沙華   大和郡山市  宮本 陶生

戦後「70年」の今年も曼珠沙華が咲いた。さて次の70年も同じように戦なき日がつづくであろうか、そんなおもいをこめた句。         【 宇多 喜代子 選 】


  羊羹に生々しくも彫られたる己(おの)が歯形に一人恥じたり
                           狭山市  奥薗 道昭  

羊羹(ようかん)はくっきり歯形が残るもので、こういう食べ物はあまりない。作者の自意識はその歯形に「恥じ」を感じた。ここに心理の屈折があっておもしろい歌になった。                               【 小池  光 選 】


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