目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  一人より二人の方がひとりだとのみどに熱きレモネード流す
                         八王子市  坂本 ひろ子

あなたといる方が、自分ひとりのときよりも、より鋭く孤独を感じる・・・・・・そんな感情が、シンプルに表現された上の句。「一人」と「ひとり」の書き分けが効果的だ。「流す」という動詞からは、何らかの決意が感じられる。     【 俵  万智 選 】


  券売機君と旅した街の名は400円で光を放つ
                     仙台市  越田 勇俊

駅名を見るだけで、大切な旅の思い出が蘇る。400円という具体的な数字がリアルで、どれくらいの遠出かも想像させてくれる。          【 俵  万智 選 】


  新米が杓子について光りおり一粒一粒ひろうも旨し
                     船橋市  山崎 三千子

炊き立ての新米は、まさに光って見える。茶碗によそったあと杓文字から一粒一粒つまんで食べる楽しみ。給仕をする人の特権と言えよう。「ひろう」が効いている。
                                    【 栗木 京子 選 】


   行く秋やさきほどありし雲もなく   吹田市  佐野 仁紀

秋も深まり空気の流れも速い日。さっきまであった雲もない。中七の率直で稚拙な言葉がいいのだ。みんな過ぎて行く。               【 矢島 渚男 選 】


   晩学の二階の小部屋小鳥くる   久喜市  利根川 輝紀

世間一般の人たちよりやっや遅く学びをはじめた。俳句であっても他の何かであっても、とにかく一人で学習している。 その軽く弾む気持ちを伝えるのが「小鳥くる」。
                                   【 宇多 喜代子 選 】


   銀杏散る二人連れにも一人にも   甲斐市  松田 健嗣

この一人二人は即(すなわ)ち誰にでもということ。 風の吹くたびに散り落ちる銀杏(いちょう)黄葉。秋の深まりが感じられる。          【 宇多 喜代子 選 】


  啼きさわぐ鴉の声に亡き母の「また人が死ぬ」とつぶやく声す
                          二本松市  内藤 四郎

人心が戦争で不安を感じていた頃、鴉(からす)がさわぐと戦場で人が死ぬと、老人たちがひそかに噂していたことを思い出す。          【 岡野 弘彦 選 】


   剣豪の立つていさうな芒かな   流山市  久我 渓霞  

芒(すすき)のなびく気配を剣豪が「立っていさうな」と見た句だが、いつしか「立っている」という図に変わってゆく。                  【 宇多 喜代子 選 】


   爽やかに名さへ留めぬ仏師かな   東京都  山口 照男

仏像の多くは作者が知れない。国宝や重文を含む優れた作品の多くが無名の作。無名に徹した人々の爽やかな生き方への深い敬意がある。
                                   【 矢島 渚男 選 】


   ギャーといふ蛙の形鵙の贄   高槻市  上村 篤信

「ギャー」という悲鳴が聞こえそうな句だ。モズには獲(と)りすぎた獲物を枝先などに刺して置く習性があって、モズの贄(にえ)という。それは実に見事な造形であるが、この句も形を叫び声で表現して優れている。          【 矢島 渚男 選 】


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