目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   鉄橋の遠きひびきも冬ざるる   加須市  松永 浮堂  

はるかかなたの鉄橋を列車が渡ってゆく響きも、荒れさびた感じであるという。枯野がはるかまで広がっていて、あたりは静寂に支配されている。うつくしい冬の大景。
                                    【 小澤  實 選 】


   百歳を一期と思へ万年青の実   本多 豊明

百歳が珍しくなくなった現今だが、やはり一期百歳はめでたい。「万年青(おもと)の実」が嫌味なく百歳を寿いでいる。               【 宇多 喜代子 選 】


   晩白柚少年の恋成就せし   福井県  中川 月見

少年の頃から恋うてきた女性とみごと結ばれた、ということなのだろう。 特別大きく香りの高い柑橘(かんきつ)類である晩白柚(ばんぺいゆ)を取り合わせて、その喜びの強さを表現している。                     【 小澤  實 選 】     


  除染終えしわが庭に咲く母子草いずこより運ばれきたりし土か
                            郡山市  伊藤 敏江

庭の除染は2年前、表土を削り新しい土が敷かれた。その土から若草が伸び、よく見ると母子草、春の七草の「ごぎょう」であった。下の句の感慨が旨にしみる。
                                    【 岡野 弘彦 選 】


   撓ひもう限界の竹大根干す   大牟田市  鹿子生 憲二 

洗った大根の葉を束ねて軒先の竹竿に干す。折れそうなまでに撓(しな)ってきた。この竿はもう限界だな。「撓ひもう」で他人の作業を傍観しているのではないことが分かる。                               【 矢島 渚男 選 】


   氷嚢の如き熟柿の下抜けし   鎌倉市  中江 優子

熟柿(じゅくし)も度が過ぎるとこうなる。 実は液体と化し、皮はまるで袋。 確かに氷嚢(ひょうのう)のようだ。ただ落ちるのではなく、「下抜けし」に目が効いている。 
                                    【 正木 ゆう子 選 】


   軒下のドレミファミレド吊し柿   秩父市  辺見  弘

吊(つる)し柿の一つ一つが音符に見えてくる。 こんなふうに見てもらえて吊し柿も喜んでいるにちがいない。                    【 宇多 喜代子 選 】


   魍魎のひそむ布団を干しにけり   八王子市  徳永 松雄

魑魅魍魎(ちみもうりょう)の魍魎は化け物たち。夜の悪夢に現れる化け物は布団に潜んでいるという大胆な断定。それを追い出すために布団を干す。
                                    【 矢島 渚男 選 】


   お隣もそのお隣も小豆干す   熊本市  田村 三渓  

秋に新小豆が収穫される。庭さきに莢(さや)のまま豆を筵(むしろ)にひろげ干す。わが家だけでなく、どの家の小豆もいい出来であったようだ。 嬉(うれ)しい。
                                   【 宇多 喜代子 選 】


  この村のたった一人の一年生背にランドセル揺らして帰る
                          篠山市  清水 矢一

兵庫県東部の山に囲まれた篠山盆地の生活を、熱心に投稿して来られる作者。私も伊勢と大和の国境の山家(やまが)からたった一人学校に通う子だったから、なつかしい。                             【 岡野 弘彦 選 】


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