目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   象という宇宙冬の動物園  浅井 愼平( あさい しんぺい )

俳句も短歌も俳人や歌人の独占物ではない。この句の作者は写真家、浅井愼平。象は一個の巨大な宇宙であるというのだ。 鯨がそうであるように。 閑散とした動物園で悠然と生きている。     < 句集 『哀(かな)しみを撃て』 から >
                      【 '16.02.01 四季 ・ 長谷川 櫂 選 】


   山眠る海の荒るれば荒るるほど   栃木県  あらゐひとし 

海の荒れと冬の山とは表面上関わりがない。しかし、こう書かれると、海の荒れが山の静けさを引き立てているような気にさせる。 海からすぐ山となる風景も見せて いる。                                 【 小澤  實 選 】


   一斉操作あり冬耕に似てかなし   郡山市  高木 茂子

年間を通して 「短日や手紙に入れる花の種」 「ふららこで待っててきっと探します」 「失いしもののひとつに万愚節」 などの秀句があった。 大震災を経験したこの人には、現代に密着した鋭く独特な感性がある。パリの同時多発テロに触発されたこの句、無関係なものを結びつけ不条理な世界を表現した。   【 矢島 渚男 選 】


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   12月8日地球儀なべて海   福井市  村田 淑子

1941年12月8日を知る一人として感慨深く、戦後70年にあたる年の句として脳裏(のうり)に留(とど)めておきたく思った。地球儀をくるりと回転させると、地球上の多くの国々が 「海」 で繋(つな)がっていることがわかる。 小さな地球儀の海が 「水の惑星」 と呼ばれる大きな地球に広がり、地球よいつまでも平和であれの願いに繋がってゆく。                          【 宇多 喜代子 選 】


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   真昼そよ吹く風曼荼羅に麦刈れり   笠間市  沢崎 だるま

七七五のリズム、ことに上七の字余りが時の流れを揺蕩(たゆた)わせ、 「そよ」の語が一句全体を柔らかさで満たしている。「風曼荼羅(まんだら)」からゴッホの描く麦畑を連想したが、ゴッホの力強さに対して、こちらは静謐(せいひつ)。農作業の中でも麦刈りだからこその句であり、たとえば稲刈りと置き換えることは出来ない表現であるところが面白い。                     【 正木 ゆう子 選 】

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   放置車に男は住んで子猫飼ふ   横浜市  我妻 幸男

放置してある自動車に勝手に住み着いてしまった男がいる。その男が子猫を拾って飼っていた。ホームレスという存在だろう。陰翳(いんえい)ある風貌まで描かれている。都心だったら撤去されるだろうし、地方だったら生きていけないだろう。東京郊外という場所も示されているのではないか。現代という時代が強く匂って来ることに魅(ひ)かれた。                           【 小澤  實 選 】

< 耐え難いほどの腐敗臭を感じますが、年間賞ということでメモしておきました >


   吉凶の際立つ年を惜しみけり   奈良市  上田 秋霜

過ぎてゆく一年をずばりと「吉凶の際立つ年」と大きき断定して詠った。国家のことか、家族のことか。ある時は心沈み、ある時は心沸いたことを思い浮かべている。
                                    【 矢島 渚男 選 】


  興福寺の阿修羅のごとき貌(かお)をして羽生結弦はすべり終へたり
                               水俣市  角田 聖子

この歌を見て、ああそうだと共感する人が多いはず。 競技を終え汗にまみれて、キッと正面を切った羽生選手の顔は、若き仏法護持の神、阿修羅に似て清くりりしい。                                 【 岡野 弘彦 選 】


  天皇陛下
    戦ひにあまたの人の失せしとふ島緑にて海に横たふ

  皇后さま
    夕茜(ゆふあかね)に入りゆく一機
        若き日の吾(あ)がごとく行く旅人やある

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  秋篠宮家長女眞子さま
    広がりし苔(こけ)の緑のやはらかく人々のこめし思ひ伝はる

  常陸宮妃華子さま
    人と人思はぬ出会ひに生涯のよき友となり師ともなりなむ

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  選者 今野 寿美 さん
    いにしへのおほいにしへの大人(うし)たちも
        ほほづゑに月見る夜ありけむ

  長野県 木内 かず子 さん (67)
    橅(ぶな)植ゑて百年待つといふ人の百年間は楽しと思へり

  香川県 大林 しずの さん (62)
    かぎろひの春の手習ひ人の字は左右にゆつくりはらつてごらん  

  新潟県 内山 遼太 さん (16)
    日焼けした背中の色がさめる頃友達四人の距離変化する    


   風邪の神貧乏神が寄せつけず   前橋市  滋野 靖司

貧乏神がいると、何もいいことはなさそうだが、作中主体を独占して、風邪の神を寄せつけないというのだ。なかなか滑稽な風邪の句。      【 小澤  實 選 】


   寒灯下妣の箪笥のナフタリン   岡山市  国定 義明

「妣(はは)」は亡くなってしまったははである。箪笥を開けると、残っていたナフタリンが寒灯下しらじらと照り、その人を思い出させる。        【 小澤  實 選 】


   公転も自転も止めて日向ぼこ   深谷市  三上 通而

止められるわけはないのに、こうも言えるところが俳句の自由である。 圧倒的な太陽の光と熱に包まれた至福感の時よ、止まれ。         【 正木 ゆう子 選 】


   皸の出来なくなれば老いてゐし   所沢市  近藤 栄子

水仕事などから開放されたのだろう。 若い人が居てくれるのも、 皸(あかぎれ)の出来ないのも嬉(うれ)しいが、それは老いなのだ、という自覚が厳しい。 
                                     【 正木 ゆう子 選 】


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