目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  かはづ鳴き棚田の水のにほひくるおぼろ月夜のふるさとにきぬ
                            平塚市  原  道雄 

この 「ふるさと」 は、 単に古びた里というだけでなく、 久しぶりで生まれ故郷の村に帰ったというなつかしい思いだろう。                 【 岡野 弘彦 選 】


   風光る風の軽さの竹とんぼ   牛久市  中村 英子

きらきらする風の中へ竹とんぼが飛んでいった。春の風光の輝きを一身に受けた「竹とんぼ」の軽やかさよく出ている。              【 宇多 喜代子 選 】


  無住寺の檀家総出のご開帳総代に負はれ秘仏いでます
                             町田市  谷川  治

作者の郷里の過疎の村では、住職も居ず檀家が総出で秘仏のご開帳を営む。総代に負われた秘仏は素晴らしいが、先日の賽銭(さいせん)箱も無い村の社も今週のこの歌も共に淋しい。                    【 岡野 弘彦 選 】


  健気にもくらし支うる姿見て「チラシ投入ことわり」外す
                           東京都  久保田 仁

郵便受けにさかんに投げ入れられるチラシ。 迷惑なものだが、 その仕事によって生計を立てている人がいることを思えば別の考えが湧く。そっとその張り紙を外したのだ。                                   【 小池  光 選 】
            < 私なら自分の生活環境を守るため外しませんが・・・ > 
 
     < 「 」で表現するなら「チラシ投入ことわり」のほうが正しいのでは? >  


 タラの芽摘(たらのめつみ)ユダを追う目をしてゐるか  東京都 天地 わたる
                    < タラ : 木へんに葱マイナス草かんむり >

楽しい山菜取りも、仕事になると、またノルマなどあるとこんな目つきになるか。あてにしていた場所が先取りされていたりすると、裏切り者を追うような目になるのだ。
                                    【 小澤  實 選 】


   初夏や水に浮くものみな光る   武蔵野市  渡辺 一甫

「水に浮くもの」 とは何だろう。 睡蓮やその葉、水草、水鳥。 野菜、切り花。芥(あくた)だって水に浮いている。初夏の水の輝きをものに託した句。
                                   【 宇多 喜代子 選 】


   筑波山に遇ふ後朝の蟾蜍   八王子市  徳永 松雄

春、蟾蜍(ひきがえる)は自分の生まれた池や沼に集まって子孫を残す。その蛙合戦を終えて山に帰ってゆく後朝(きぬぎぬ)のガマに出会った。ガマの膏(あぶら)売で知られる筑波山の道でのこと。                 【 矢島 渚男 選 】


   語部の背負ふ戦争昭和の日    福島市  二宮  宏

戦後70年、戦争の悲惨な体験を語り続けた語り部。 もう二度とこんなのとを繰り返してはならないと戦争を背負ってきた人。           【 矢島 渚男 選 】


   小綬鶏に呼ばれて君は行ったきり   千葉市  椿  良松

小綬鶏(こじゅけい)はチョットコイチョットコイと鳴く。君はその声に呼ばれて行ったのか。逝った人は、本当に、見事に、決して帰らない。      【 正木 ゆう子 選 】


  老いわれのけふ一日も過ぎたりとつぶやきて壁の日めくりを剝ぐ
                             長野県  羽毛田 栄

私も長く日めくりの暦を使うことを忘れていたが、 最近、 何となくあの一日一日の感触がなつかしく思われるようになった。              【 岡野 弘彦 選 】


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