目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  クリスマスケーキを誰が九つに切ったのだろう遠き昔に
                           つくば市  岩瀬 悦子

 9人家族だった頃の記憶であろう。 奇数に切り分けるのはむずかしく、しかも9等分では1つずつがかなり小さい。 だが賑やかだった日々の楽しさが伝わってくる。
                                     【 栗木 京子 選 】
 


   洗ひても洗ひがひなき牛蒡かな   多摩市  福田 澄子

まったくこの句の通りである。せち料理につかう牛蒡(ごぼう)だろう。泥を落としても泥と同じ色の牛蒡。これも台所での発見である。      【 宇多 喜代子 選 】


  足音にも笑顔のありてゑくぼもつ明日香さんといふ看護師来る
                              盛岡市  草花 一泉

足音に笑顔があるとは、なんて素敵(すてき)な看護師さんだろう。明日香さんという固有名詞も、前向きなイメージで、効いている。        【 俵  万智 選 】


  信号は都会の人を走らせる日に何回も点滅をして   
                          仙台市  岩間 啓二

まもまく赤になるという合図。じゃあ次の青を待とうという人は少なく、ほとんどの人が慌てて横断する。「走らせる」が面白い。人が人のために作ったものなのに、いつのまにか人が支配されている。                      【 俵 万智 選 】


   淋しさの正体冬の薔薇に棘   栗原 公子 ( くりはら きみこ )

薔薇(ばら)園は冬の薔薇の花ざかり。その花にもまして、みごとなのが幹や枝に並んだおびただしい棘(とげ)である。薔薇は何ゆえに棘で身を守ろうとするのか。薔薇の淋(さび)しさが棘になったのか。棘があるから薔薇は淋しいのか。句集『銀の笛』から。                   【 '17.01.28 四季 ・ 長谷川 櫂 選 】


   父の打ちし釘に今年も注連飾る   下田市  森本 幸平

かつて父が打った釘に、今年もまた注連(しめ)を飾って新年を迎える。父はすでにこの世にいないのかもしれない。しかし、注連をかける釘に、父の存在を強く感じているのだ。                               【 小澤  實 選 】


   またしても切符失ふ手袋よ   東京都 杉中 元敏

手袋をすると指の感覚が鈍くなるが、それにしても責任をぜんぶ手袋に押しつけているようで、そのおかしみが味わいの一句。            【 正木 ゆう子 選 】


  さよならにも似ていた母のありがとう帰京の朝の最後の言葉
                             町田市  富山俊朗

故郷に老いたる母を訪ねて、帰るとき母はありがとうと言った。それが最後の言葉となった。思い返せば胸に迫る。                    【 小池  光 選 】


  急死せしを幸せと言う声のあり振り向かぬまま出棺を待つ
                          芦屋市  中島 富美子

急死した人の葬儀。出棺を待っていると後方で誰かの声がする。どのように死を迎えるのが幸せなのか、意見の分れるところ。四句目に複雑な心境が託されている。
                                    【 栗木 京子 選 】


   冬の月上げて時待つ熊本城   茅ヶ崎市  清水 呑舟

再び元の堂々たる姿になる時を、城自身、じっと待つ。満身創痍(い)のまま、腰を据えて。月を上げている主体を城とすることで、城に主導権があるように読めるのが嬉しい。                               【 正木 ゆう子 選 】


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