目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   形なきものに躓く寒さかな   千歳市  鶴谷 雪子

段差とか石とかに躓(つまず)く。脛(すね)を打ったり、手を挫(くじ)いたりする。ところが体の硬くなっている冬、寒さに躓くこともある。心理的な躓きとまで考えないほうがよさそう。                            【 宇多 喜代子 選 】


   夫に似た冬帽が行くだけのこと   横浜市  大島 早苗

あっ似てる、冬帽子で行くひとをみてそう思った。夫と背格好が似ているというより、冬帽子の雰囲気が似ていたのだろう。気が抜けたような淡い下五が効果的。
                                   【 宇多 喜代子 選 】


   鰭酒や小箱マッチは桃印   川崎市  多田  敬

鰭(ひれ)酒に火を点(つ)けるときは、やはりマッチに限る。マッチのラベルには味のあるデザインが多いが、桃印というのがあるのだ。         【 正木 ゆう子 選 】


   初旅ははなやぐ街へその中へ   会津若松市  佐藤 秀子

街のさらに「その中へ」に、ときめきが読み取れる。好きな通り、人の流れ、目当ての店。それらに入り込み街の一部となる嬉しさ。3つのハ音、2つのヘ音がリズミカル。 
                                     【 正木 ゆう子 選 】


  亡き妻へ書きし手紙を折りて飛ばすどんど焼きなる炎の中へ
                            常総市  渡辺  守

亡き妻へふと手紙を書いた。 出すすべはない。 どんど焼きの火の中へ折って飛ばす。 実にドラマチックであるけれど、真実味が籠っている。 はっとさせられた歌。
                                     【 小池  光 選 】


  黒豆とがめ煮の火入れ繰り返す毎年ながら作り過ぎたり
                            春日市  早原 仁美

おせち料理の黒豆とがめ煮。つい多めに作ってしまう。熱を加えてまた翌日も翌々日も、と味わうのも煮物の醍醐(だいご)味である。       【 栗木 京子 選 】


   角巻に母の旧姓知りにけり   横浜市  我妻 幸男

角巻は雪国の頭巾。それが押し入れの奥などから出てきた。そこに母親の旧姓が縫いつけられていて、北の雪国での厳しかったであろう少女時代に思いを馳せた。
                                    【 矢島 渚男 選 】 


   今年はと思ふ二日に寝込むなり   相模原市  大谷 千恵子

張り切ったとたん、お正月にダウン。 体は休める時を知っているのだ。 休めばまた、元気は出るもの。 「今年はと思ふ」が「二日」に掛かってゆく文脈が巧みである。
                                    【 正木 ゆう子 選 】
 


   咲きしぶる蕾ありけり冬薔薇   白井市  毘舎利 愛子

冬薔薇(ふゆそうび)は、すべての蕾(つぼみ)が大きく開くとは限らない。小さかったり、ついに開かなかったり。寒風の中で震える薔薇。だからこその風情。
                                    【 正木 ゆう子 選 】
 


   父の忌に訪ひし生家の雪下ろし   札幌市  藤林 正則  

生家を訪れると、屋根にすごい雪である。さっそく雪を下している。父の忌日で訪れなかったら、つぶれてしまったかもしれない。             【 小澤  實 選 】


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