目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
押し花に煉瓦を乗せて春の日に生まれた恋をおしまいにする
東京都 野上 卓
春の日の恋と、関係のある押し花なのであろう。思い出を色あせないように押し花にする。 と同時に、心に封印をする煉瓦 ( れんが ) とも読める。 切なくも美しい儀式だ。 【 俵 万智 選 】
東京都 野上 卓
春の日の恋と、関係のある押し花なのであろう。思い出を色あせないように押し花にする。 と同時に、心に封印をする煉瓦 ( れんが ) とも読める。 切なくも美しい儀式だ。 【 俵 万智 選 】
夕立の新宿晴れの池袋 越谷市 小林 ゆきお
これは東京でのこと。 各地でこのようなことが起こる。 古人が「馬の背を分ける」とたとえたほどに、わずかばかり離れたところでかくも違うのが「夕立」だ。
【 宇多 喜代子 選 】
これは東京でのこと。 各地でこのようなことが起こる。 古人が「馬の背を分ける」とたとえたほどに、わずかばかり離れたところでかくも違うのが「夕立」だ。
【 宇多 喜代子 選 】
おかえりといわない飲みかけの麦茶 館林市 松本 みゆき
相手の帰りが遅かったか、 喧嘩(けんか)の途中か。 わざとお帰りを言わない。 生ぬるい麦茶にすべてを語らせて、こんな個性的な詠み方もある。
【 正木 ゆう子 選 】
相手の帰りが遅かったか、 喧嘩(けんか)の途中か。 わざとお帰りを言わない。 生ぬるい麦茶にすべてを語らせて、こんな個性的な詠み方もある。
【 正木 ゆう子 選 】
冷房の風の直接あたる席 松山市 久保 栞
冷房の風が直接あたるが、よけることはできない。古いクーラーの稼働する会議室だろうか。快のみならず不快も鮮(あざや)かに句にしている。 【 小澤 實 選 】
冷房の風が直接あたるが、よけることはできない。古いクーラーの稼働する会議室だろうか。快のみならず不快も鮮(あざや)かに句にしている。 【 小澤 實 選 】
鵜籠より出たくなき鵜もをりしかな 東京都 杉中 元敏
どの鵜(う)も早く籠を出て、鮎(あゆ)を捕ろうとはやっているわけではない。籠のなかにこもっていたいものもいる。妙に人間くさい鵜である。 【 小澤 實 選 】
どの鵜(う)も早く籠を出て、鮎(あゆ)を捕ろうとはやっているわけではない。籠のなかにこもっていたいものもいる。妙に人間くさい鵜である。 【 小澤 實 選 】
一草もゆらさず蛇のあらはれて 千葉市 中村 重雄
蛇は草と草との間をたくみに通り、草を揺らすことも無く、人の前に現れ出る。それだけ唐突に現れる感じに、人は驚かされるというわけだ。蛇の本質が書き留められた。 【 小澤 實 選 】
蛇は草と草との間をたくみに通り、草を揺らすことも無く、人の前に現れ出る。それだけ唐突に現れる感じに、人は驚かされるというわけだ。蛇の本質が書き留められた。 【 小澤 實 選 】
人念(も)えと人忘れよと陰影(かげ)ふかくあじさいゆらぐ午後の卓上
東京都 長田 裕子
私も、自分の誕生日近く咲く、あじさいの花が好きだ。藍(あい)色ふかい小花の手毬(てまり)のような集合は、人のさまざまな思いを誘う。 一首の上の句に花の感じが巧みに出ている。 【 岡野 弘彦 選 】
東京都 長田 裕子
私も、自分の誕生日近く咲く、あじさいの花が好きだ。藍(あい)色ふかい小花の手毬(てまり)のような集合は、人のさまざまな思いを誘う。 一首の上の句に花の感じが巧みに出ている。 【 岡野 弘彦 選 】
瘡蓋を剥がすも遊び草いきれ 東京都 野上 卓
草いきれから連想するのは、草を結んだ罠(わな)。 あるいは草を被(かぶ)せた落とし穴。遊んで、転んで、擦りむいて。瘡蓋(かさぶた)が出来て、それを剥がすのがまた楽しみなのである。 【 正木 ゆう子 選 】
草いきれから連想するのは、草を結んだ罠(わな)。 あるいは草を被(かぶ)せた落とし穴。遊んで、転んで、擦りむいて。瘡蓋(かさぶた)が出来て、それを剥がすのがまた楽しみなのである。 【 正木 ゆう子 選 】
今年竹きのふさ緑けふ真青 八尾市 仲谷 加代子
今年竹の伸び行くさまを色で表現した句。 きのうと今日でかくもちがう。 ぐんぐん変化する様子がよくわかる。 【 宇多 喜代子 選 】
今年竹の伸び行くさまを色で表現した句。 きのうと今日でかくもちがう。 ぐんぐん変化する様子がよくわかる。 【 宇多 喜代子 選 】
あめんぼのめっきり減りし田の面(おもて)ながるる雲はうつくしきかな
高岡市 野尻 徹治
水上を軽やかに滑走して、小昆虫を捕らえる、スケーターのようなあめんぼも少なくなった。だが作者はそれに代わって、すっきりと、流雲を映す水面の美を感じている。 【 岡野 弘彦 選 】
高岡市 野尻 徹治
水上を軽やかに滑走して、小昆虫を捕らえる、スケーターのようなあめんぼも少なくなった。だが作者はそれに代わって、すっきりと、流雲を映す水面の美を感じている。 【 岡野 弘彦 選 】