目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
台風の眼の中あさぎまだらかな 川崎市 多田 敬
蝶(ちょう)の渡りは、台風の時期と重なるので、こんな場面もあるだろう。 台風があり、中に眼(め)があり、その中に蝶がいるという、入れ子的俯瞰(ふかん)図。
【 正木 ゆう子 選 】
蝶(ちょう)の渡りは、台風の時期と重なるので、こんな場面もあるだろう。 台風があり、中に眼(め)があり、その中に蝶がいるという、入れ子的俯瞰(ふかん)図。
【 正木 ゆう子 選 】
鶏頭に話しかけたる無口かな 流山市 久我 渓霞
鶏頭という植物の花はどこか花離れしていて人間くさい。脳を連想する人も多いし話しかけたくもなる。平素、無口でとおる人付き合いの好きでない作者が話しかけた。 【 矢島 渚男 選 】
鶏頭という植物の花はどこか花離れしていて人間くさい。脳を連想する人も多いし話しかけたくもなる。平素、無口でとおる人付き合いの好きでない作者が話しかけた。 【 矢島 渚男 選 】
【 岡野 弘彦 選 】
胸せまる兄の臨終に立ちあへり夜ふけ音なく雨降りしきる
羽曳野市 赤沢 皆
原作は「心急く兄の臨終立ち合いて夜更け音なく降りしきる雨」。思いのほどは大体、歌い得ているが、生涯の中でも大切な兄との別れだ。いま一息、深い推敲(すいこう)を。
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金木犀の香りただよふ風の日をひと日憂ひて夕べいたりぬ
八千代市 一戸 光代
原作は「好む人好まぬ人あり甘き香の金木犀を風の日憂ふ」。短歌は理屈や説明を先だてて歌うと、歌がらが小さくなります。
胸せまる兄の臨終に立ちあへり夜ふけ音なく雨降りしきる
羽曳野市 赤沢 皆
原作は「心急く兄の臨終立ち合いて夜更け音なく降りしきる雨」。思いのほどは大体、歌い得ているが、生涯の中でも大切な兄との別れだ。いま一息、深い推敲(すいこう)を。
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金木犀の香りただよふ風の日をひと日憂ひて夕べいたりぬ
八千代市 一戸 光代
原作は「好む人好まぬ人あり甘き香の金木犀を風の日憂ふ」。短歌は理屈や説明を先だてて歌うと、歌がらが小さくなります。
牛を見る先を吾も見る鹿二頭 福島県 黒沢 正行
牛の目に緊張が感じられたのだろう。視線の先を見ると、鹿もこちらを見ている。何事か起こるわけではないが、静かな緊張がしばし漂う。 【 正木 ゆう子 選 】
牛の目に緊張が感じられたのだろう。視線の先を見ると、鹿もこちらを見ている。何事か起こるわけではないが、静かな緊張がしばし漂う。 【 正木 ゆう子 選 】
晩秋の海鳴り母を一人置き 枚方市 船橋 允子
一人残す母の家に海鳴りが響くのか。省略がきいているため、母と共に住んで世話できないすべての人の心に届く句である。親を一人にする切なさは、いつまでも後を引く。 【 正木 ゆう子 選 】
一人残す母の家に海鳴りが響くのか。省略がきいているため、母と共に住んで世話できないすべての人の心に届く句である。親を一人にする切なさは、いつまでも後を引く。 【 正木 ゆう子 選 】
水澄みてなほも見えざる瀞の底 東京都 望月 清彦
瀞(とろ)とは、河水の深くて、流れの静かなところ。秋が深まって水が澄んできても底が見えないとは、おそろしく深いのだ。澄んだ水の重なりに、神秘的なうつくしさがある。 【 小澤 實 選 】
瀞(とろ)とは、河水の深くて、流れの静かなところ。秋が深まって水が澄んできても底が見えないとは、おそろしく深いのだ。澄んだ水の重なりに、神秘的なうつくしさがある。 【 小澤 實 選 】
ちちははは手足の先になほ生きて玄関の靴そろえさせゐる
つくば市 潮田 清
幼い頃しつけられたことは、高齢になっても無意識にしている。亡くなっても、なお見守られている感じが伝わってくる。 【 俵 万智 選 】
つくば市 潮田 清
幼い頃しつけられたことは、高齢になっても無意識にしている。亡くなっても、なお見守られている感じが伝わってくる。 【 俵 万智 選 】
免許証返納をしてうだうだの訛りなつかし一輌電車
成田市 神郡 一成
1輌編成・・・つまり車社会なのだろう。返納は大変だが、こんな情緒をもたらした。「うだうだの」にこもる「変わってねえな」というニュアンスがいい。 【 俵 万智 選 】
成田市 神郡 一成
1輌編成・・・つまり車社会なのだろう。返納は大変だが、こんな情緒をもたらした。「うだうだの」にこもる「変わってねえな」というニュアンスがいい。 【 俵 万智 選 】
濡れてゐる露草犬の鼻の先 川崎市 沼田 広美
歩いている犬の鼻の先に、朝露に濡(ぬ)れて咲いている露草がある。一瞬の景を描ききった。一瞬の出会いであるからこそ、うつくしい。 【 小澤 實 選 】
歩いている犬の鼻の先に、朝露に濡(ぬ)れて咲いている露草がある。一瞬の景を描ききった。一瞬の出会いであるからこそ、うつくしい。 【 小澤 實 選 】
日は水に水は日に映え鷹渡る 津 市 中山 道春
はるか南海へと渡って行く鷹の目に映っている風景を、上五と中七で描く。大洋が広がり、その上に太陽が差すばかりの世界である。渡ってゆく鷹への愛を感じる一句。 【 小澤 實 選 】
はるか南海へと渡って行く鷹の目に映っている風景を、上五と中七で描く。大洋が広がり、その上に太陽が差すばかりの世界である。渡ってゆく鷹への愛を感じる一句。 【 小澤 實 選 】