目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   水圧に耐え鮟鱇の貌となる   枚方市  加藤  賢

鮟鱇(あんこう)のつぶれた平たい風貌は、海底の大きな水圧に耐えてきた結果であるというのだ。進化してきた道まで望んだ、深い描写である。  【 小澤  實 選 】


  月光を胸深く吸いて気づいたり青の字になぜ月があるかを
                             酒田市  村上 秀夫

月光を心ゆくまで味わった感覚。それを一言で表すなら「青」を感じたということだろう。伝えにくい主観が、漢字というアイテムを通して、うまく表現されている。
                                     【 俵  万智 選 】


    そで口に北風こぞう入りこむ
        福岡県 福岡海星女子学院付属小学校5年  高塚 愛心

着こんでいても、そでから冷たい北風(きたかぜ)が入ってくることがあります。「北風入りこむ」ではなく、「北風こぞう入りこむ」としたのがポイント。「ふふふ。ここにスキがあるぞ」といたずらっぽく笑(わら)うこぞうの顔まで見えてくるようです。
                 【 ’17.12.09 KODOMO俳句 高柳 克弘 選 】


   神の留守これつてやばくないですか   大阪市  大塚 俊雄

あまりの口語に素通りしかけたが、確かにヤバイかもと再読した。神の留守は季語だけれど、この句は季語の域を越えて、本気で時代を憂えているように読める。
                                    【 正木 ゆう子 選 】


   梟の星得てさらに瞑想す   久喜市  深澤 ふさ江

梟(ふくろう)が枝にとまり、鳴きもしないでじっとしている。星がまたたきはじめても、その姿勢を変えない。梟なる不思議な鳥の声明を捉えた。    【 小澤  實 選 】


  満月を搾れば星が生まれると君が語った宇宙の仕組み 
                            高島市  宮園 佳代美

なんてロマンチックな話だろう。三日月は、満月を搾った後だから、くし型レモンの形なのか。 もちろん、この 「宇宙の仕組み」 は、愛の言葉でもある。 恋する瞳には、夜空がこんなふうに見えるのだ。                   【 俵  万智 選 】


  「悲しい」の横棒をあと4本は追加して君に送りたい夜
                             燕市  田巻 由美子 

どれくらい悲しいかを表現するのは難しいが、意表をついた方法で、これはよほどのこと! と伝わってくる。                        【 俵  万智 選 】


   稲刈や先祖代々空が好き   横浜市  津田  寿

わが家もわが家もと声が挙がりそう。 先祖代々同じ土地を守り、同じ空の下で耕してこその句だろう。「空が好き」 というあまりにもシンプルな言葉が、かえって新鮮。
                                   【 正木 ゆう子 選 】


   漬物を労る母のちゃんちゃんこ   仙台市  内海 弘利

漬物と母とちゃんちゃんこの取り合わせは珍しくないが、「労(いたわ)る」が心を打つ。労るように醸す漬物は、きっと母上にしか出せない味。  【 正木 ゆう子 選 】


  母さんの厚いころものてんぷらを食べてみたいと四人兄弟
                              仙台市  植沢 悦子

簡潔そのもののような歌だが、 四人の男兄弟がてんぷらの揚がるまで、 母さんの手もとを見守っている表情が見えるようだ。            【 岡野 弘彦 選 】


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