目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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  吾で絶ゆる墓を清めて薄れたる南無阿弥陀仏の碑銘をなぞる
                            久留米市  緒方 英精

わざと年初の選歌に選んだわけではない。自然な世相の一端である。自分の代で終わる累代の墓への惜別の情。いまさまざまな形で、世相の変化が起きている。
                                    【 岡野 弘彦 選 】


   会釈して会釈のかへる松手入   川口市  広田 絹子

事々しい挨拶(あいさつ)ではなく、双方会釈ですます。独りは木の上、一人は通行中。ご精がでますね、いやいや、その程度の挨拶である。 【 宇多 喜代子 選 】


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  松手入れ通る人みな立ち止まりしばし眺めて一言のあり
                              横浜市  井上 誠一

松の木の手入れをしていると幾人かが立ち止まる。「見事な木ですね」「大変ですね」「気をつけて」「新年の準備ですか」などと声が掛かる。和やかな場面が目に浮かぶ。                                【 栗本 京子 選 】
                            < 同じ1月8日の紙面より >


   賀状買うたった一人の兵の友   埼玉県  秋葉 道雄

ともに戦地から生きて帰り、今はともに高齢となった友人に出すため、年賀状を買う。俳句とはなんと寡黙なのだろう。あとは読み手ひとりひとりが胸の内で解釈する。
                                   【 正木 ゆう子 選 】


  年一度の更新手続きするように君から届く印刷の賀状
                             燕 市  田巻 由美子   

味気ないけど、年に一度は思い出すという間柄は、この一枚で更新される。ある種の年賀状のありようが、的確に伝わってくる。言い得て妙すぎて、やや悲しいくらいだ。                                   【 俵  万智 選 】


  マンションの13階に住む彫師日に二人だけ予約の客とる
                              前橋市  船戸 菅男

私は若い時から、短歌と推理小説は相性がいいと思っている。ただし原作「マンションの13階に彫師住み日に二人だけ予約の客が」 の傍線部がいま一息弱い。 
                                     【 岡野 弘彦 選 】


  物置きに大きねずみのいた事を嫁にも孫にも話さずにおり
                            所沢市  鈴木 照興

それはそれはびっくりするほど大きなネズミだった。心配させまいと家族には黙っていたが、ああ、歌が新聞に載ってしまった。             【 小池  光 選 】 

              < 同じ発想の歌が選ばれることに抵抗を感じました >
 
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  坪庭にふと見し蛇を夕飯のときにも妻に話せずにゐる
                            成田市  神郡 一斉

庭に蛇を見た。 そのことを蛇嫌いな妻には話せない。 夕飯のときにも話せない。 という歌だが、 なかなか夫婦間の微妙な心理をついている。何でも話していいものでない。                            【 17.07.31 小池  光 選 】


   北限の蜜柑の味も捨てがたく   千葉市  中村 重雄

蜜柑(みかん)農家と自家用とでは違うだろうが、温暖化によって北限が北上しているのは確かなようだ。蜜柑の句として、おもしろい切り込み方。
                                    【 正木 ゆう子 選 】


   吾の架けし鉄道が見ゆ冬銀河   枚方市  加藤  賢

鉄道に工事に携わったことのある作者なのだな、といったんは文字通りに解釈。一方、鉄道と銀河とくれば宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」。そこで現実と物語が融合する。                                【 正木 ゆう子 選 】


  あれもこれも賞味期限が過ぎていた時は静かに全てを決める
                               三次市  山本 美和

いつでも食べられると思っていたら、うっかりタイミングを逃してしまった。下の句が警句めいていて、人生における行動の句というものについて、考えさせられる。
                                    【 俵  万智 選 】



  おもしろき事無き日には西の聖子東の愛子ひねもす読めり
                               西宮市  野田 澄子

田辺聖子氏と佐藤愛子氏の小説やエッセイ。 いずれも読みやすくて内容が深く、心が沈みがちな日に読めば元気をもらえる。 「西の聖子東の愛子」がじつに頼もしい。                                  【 栗木 京子 選 】


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