目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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父を知らず戦争を知らず敗戦日   神奈川県  中島 やさか

物心ついた時から父が居なかった。戦死したことも知らなかった。終戦記念日がくるたびに、いや、いつも心に重いのだ。                【 矢島 渚男 選 】


分け入らば蛇身とならむ草いきれ   羽村市  竹田 元子

蒸れるような草いきれの中に分け入ったら、蛇になってしまいそうだと言う。蛇身に変身した清姫伝説を踏まえて巧(たく)みで、作者の情念が期せずして現れたような作品。                                 【 矢島 渚男 選 】


   明日死ぬる蝉も鳴くなり蝉時雨   青森市  小山内 豊彦

長い地下暮らしから地上に出て来て幾日かを生きる。地上ではまず鳴く。全身で鳴く。                                【 宇多 喜代子 選 】


  画用紙に一本線をひいてみて水平線に見えたなら夏   
                               東京都  楠  えり子

素敵(すてき)な夏の定義だ。○○なら夏、の○○を考えたとき、こういう発想があるとは。また、一本線が何に見えるかで別の結果を考えるのも楽しい。地平線なら旅、だろうか。                            【 俵  万智 選 】


    尻青き裸子居間を駆け廻る   東京都  岩崎 美範

いつもの居間だが、幼子が来て裸で走り回っていると、なんだか別の場所のような気もする。「尻青き」も神々しい。風呂に入りたくなくて、逃げ回っているのだろうか。
                                    
【 小澤  實 選 】


   青柿のよく落果する誕生日   熊本市  坂崎 善門

自祝の句に、青柿の落下を持ってきて、味わいあり。虹が出たとか、花が咲いたとかではない渋い祝い方こそ、俳句に向いているかも。     【 正木 ゆう子 選 】


   遠雷や風のことなら風見鶏   東京都  本多 明子

遠雷と風見鶏を捕り合わせただけで、二つを繋(つな)ぐ中七に殆(ほとん)ど意味のないところが面白い。当たり前のことを敢(あ)えて言った中七がカゼ・カザの韻を生み、一句を広やかに。                      【 正木 ゆう子 選 】


   夏空の色定まらぬ富士裾野   調布市  野口 澄栄

富士山ならぬ富士裾野。広々とした夏野を覆う空模様が不安定なのだ。眼前に広がるのは広い裾野で山容は見えない。夏空の「色」にその日の天気の様子がうかがえる。                             【 宇多 喜代子 選 】


  生涯の静止画像の一つにて潮田二等兵挙手の礼あり
                              つくば市  潮田  清

「潮田二等兵」は兵士だった頃の作者自身であろう。 消えることのない戦時中の記憶。 感情を示す語を用いず 「障害の静止画像の一つ」 と表したところに深い思いがある。                              【 栗木 京子 選 】 


  地図上の琵琶湖に線が引かれゐて自治体ごとの領有示す
                              仙台市  岩間 啓二

琵琶湖保全のため各自治体が交付金を受けるのに必要なことだとは聞いた。とはいえ湖は一つ。 誰のものでもなかった。人間の都合による線引きへの違和感が伝わってくる。                              【 俵  万智 選 】


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