目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   瓦礫掘る指痛からむ冷たからむ   半井(なかば い) 茉莉子

人はなぜ瓦礫(がれき)を掘っているのか。阪神淡路大震災の被災地では多くの人々が素手で瓦礫を掘った。その下に埋まっている親や子どもたちを求めて。あれから14年になるが、今もなお心の中で瓦礫を掘り続けている
                            【 四季 ・ 長谷川 櫂 】


   雪を掻き開くわが道われが行くその生活を捨てず青森
                          青森市  滝野沢 弘

「わが」 「われ」 という強い表現に、決意と自負がにじむ。雪の道は、人生の道でもあろう。                        【俵 万智 選 】


   訝しみ滝沢さんかと幾度も問ひたる人もいたく老いたる   
                           千曲市  滝沢  了

何十年ぶりかで旧友と会った。懐かしさより変貌ぶりにとまどい、驚きが先に立つ。お互いの事。かなしい歌だが厳粛だ。訝(いぶか)しみ、幾度も、と刻むところに臨場感がある。                 【 小池  光 選 】


   数え日の忘れ物また忘れ物    出雲市  河瀬 千草

慌しい歳末。迎春用意やこまごました用が後から後からおしよせる。一日は矢のように過ぎてゆく。忘れ物の頻度も増す。    【 宇多 喜代子 選 】


   初鶏の第一声を我にあぐ   水戸市  中崎 正紀

新しい年を告げる鶏の声、その初めての声を私にあげてくれた、というのだ。
作者自身が飼っている鶏かもしれないが、そうでなくてもむろんいい。 清清しい一声である。先取りの新年の句の投句が嬉しい。   【 小澤  實 選 】


両陛下が昨年詠まれた歌( 元旦の読売新聞 ・ 宮内庁発表 )より
 
 皇后陛下
  <北京オリンピック>
 たはやすく勝利の言葉いでずして「なんもいへぬ」と言ふを肯(うべな)う


   冬の夜の牛の嘆きをきく湯船   笠間市 沢崎 だるま

作者には牛の気持ちがわかるのだろう。牛もまた主人に何かを訴えているのかもしれない。人と牛との連帯感まで感じられて、滋味あり。  
                              【 正木 ゆう子 選 】


   ふるきよきころのいろして冬すみれ    飯田 龍太

紫は追憶の色。『源氏物語』で紫色の花や紫という色そのものが重要な役割を果たしているのも、この物語が偉大な追想の物語であることと深くかかわっている。 菫(すみれ)もまた紫の花。 しかも冬の菫となると、いっそう懐かしい感じがする。                   【 四季 ・ 長谷川 櫂 】



   うまさうな雪が降りくる一茶の忌   八王子市  徳永 松雄

一茶忌は陰暦11月19日。 一茶の 「むまさうな雪がふうはりふはり哉(かな)」を踏まえた句。雪への挨拶であり、一茶への挨拶でもある。
                             【 宇多 喜代子 選 】


 南天の実も気づかない想いあり心の底に忘れない人  
                            大垣市  岡田 薫

よく知られた山崎方代の一首「一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております」が下敷きになっている。ひねりの効いた上の句が、特にいい。                   
                                【 俵 万智 選 】


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