目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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「マイカーの維持費でタクシー使えばいい」
     「スーパーの帰りに河原に寄れまい」  坂戸市  神田 真人

友人との会話をそのままに。買い物して帰りに川を見るのが楽しみなのだ。
合理的計算だけで人は生きない。           【 小池  光 選 】



 物を忘れ添いくる心のさみしさは私がだんだん遠くなること  
                           河野(かわの) 君江
 
年をとって物忘れをする。それは自分が自分から遠ざかっていくようで寂しいというのだ。作者は歌人、河野裕子さんの亡き母上。この母の歌を詞書(ことばがき)にして娘の歌がある。「私がだんだん遠くなる」。淋しかったろらう、恐かったらう、四年前の母。             【 四季 ・ 長谷川 櫂 】


   菜の花の夕べふはりと眠くなる    加須市  松永 浮堂

春ののどかな夕べの感じられる句。暮れなずむ菜の花の黄。郷愁やるかたない景が眠りを誘う。春の平穏とはこんな時間か。 【 宇多 喜代子 選 】



 梟(ふくろう)のかなしきときや目をつむる   町田市  枝沢 聖文

夜行性の梟は昼は目をつむっている。それを悲しさをこらえる姿と感じ取っているのだ。作者と梟とが重なっている。西洋では知恵の象徴とされている梟にふさわしいと思う。                     
【 小澤 實 選 】


   病みてより耳よく澄みて竹に雪    藤田 顕英

聡くなったことを「澄みて」としたことで、ポジティブな印象に。しかも下五が具体的。竹に触れる雪の清らかな音が聞こえそうだ。  【 正木 ゆう子 選 】



 喪の家の雪は近所で掻く習い雪の階段をひつぎ出でゆく  
                          能代市  小田嶋恭葉

二階から出入りしなければならぬほど積雪の多い地方で、葬儀を行うのは大変なことだ。そういう時、長い共同体の中で育ってきた助けあいの習俗が力を発揮する。                      【 岡野 弘彦 選 】


 あと三年生きてありたし祈りこめ植うる杉苗の芯立つを見む   
                           茨城県  青山 乙二

戦後荒廃をつづけてきた日本の山林が、ようやく見直されようとしている。植えつけた杉苗が生着して青々と芯が立ってくるのを見たいと願う作者は85歳。                            【 岡野 弘彦 選 】


   手を振って枯野の道を帰り来よ     横浜市  須藤 寿郎

さりげない句。さりげないからこそ生者に対して言っているのではないと解釈させる力がある。笑顔で帰ってくる大切な人の幻。   【 正木 ゆう子 選 】


   しまく日のただ真白なる五感あり    青梅市  青柳 富也

本来は視覚にのみ感じる色彩を、他の感覚にも対応させただけでなく、五感そのものが真白という個性的な句である。視・聴・嗅・味・触、そのすべてが真白。                         【 正木 ゆう子 選 】



   石投げて何呼び戻す冬の海   愛西市  坂元 二男

そういえば男は水を見ると石を投げたがる。あれは何かを呼び戻していたのか。春や夏や秋でなく冬の海であるところがいい。  【 正木 ゆう子 選 】


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