目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   一分二分三分四分の花段々   大牟田市 田中 久徳

桜の花の満開までの様子を、一分二分、七分八分とかぞえつつ待つ。その気分の高まりを「花段々」と簡潔に言い表した句。満開になるまでの時間をうまく表現した句。

   
   退院の一歩に仰ぐ桜かな     大牟田市 西山 徳子

桜の時季の退院。病院の玄関を出て、まず仰いだのが桜。治療のつらい日には思ってもみなかったことだ。幸先のよい気分がふつふつとみなぎる。

   
   朝刊の紙面いっぱい花便り    佐野市 丹羽 恒子

なんと素直な句だろうと思う。この句の着眼は「朝刊」。新鮮な朝の気持ちのよさがよく伝わる。                     
                             【 宇多 喜代子 選 】



  すれ違ふ妻のゐる幸(さち)麦を踏む   能代市 小田嶋 恭葉

今でも麦踏みをしている地方がある。この句は「すれ違ふ」と、麦踏みの状況を具体的にあらわしたのがよい。畝を横向きに踏んでゆくと向こうから来た妻とすれ違う。都会のすれ違いとは全く違う。     【 矢島 渚男 選 】


   行く末の後の行く末目刺焼く   愛知県 稲垣  長  

いま在るもののすべての前途にある行く末。目刺を焼きながら、「行く末」の更にその先のことを考える。 わが行く末か、子の行く末か。目刺から察して、それが天下国家ではなさそうだと察しがつく。   【 宇多 喜代子 選 】



きょう竜でいちばん体が長いかもすべってみたいなアルゼンチノサウルスの背
                            鹿島市  榎本 修也

作者10歳。「きょう竜」 と書くところがうれしくなる。恐竜の長い名前がいかにも背中まで長そう。気をつけて滑ろう。         【 小池  光 選 】


    もらはるる仔猫の声の遠ざかる     山田 潤子

小さいころに親のもとを離れるのはつらいもの。それは犬やネコも同じ。この句、もらわれてゆく子猫が母親が恋しくて鳴きつづけているのだ。 自分の身に何が起こっているかも知らずに。子猫をあげた人もその声がいつまでも聞こえる。                         【 四季 ・ 長谷川 櫂 】


   うちひしがれて三月の空を見る   泉佐野市  向井克之介

三月は入試・就職など悲喜こもごもの季節。打ちひしがれて天を仰ぐ、そんな人もたくさんいる。                    【 矢島 渚男 選 】


   しゃぼん玉ひとつ叶へばまた一つ   南栃市  安居 雅寿

しゃぼん玉のことを言っているようでありながら、一句の終わりでは、いつのまにか思いが人生全般の願いへと広がっている。「叶(かな)う」という言葉の働きである。                       【 正木 ゆう子 選 】


 イチローに満塁策をとらざりし韓国チームに侍を見る 
                        さいたま市  小野 剛志

イチローと真っ向勝負した相手方こそ侍だという歌。同感。敵をたたえることこそ武士道の精神。「我は称(たた)えつ、かの防備。彼は称えつ、わが武勇」という歌が昔あった。                    【 小池  光 選 】


 「どうしたの」「なんでもないよ気にするな悪いことなどしてないからな」 
                          東京都  民辻 善史郎

と、言った瞬間「悪いこと」に若干の覚えがある。そしてその心の動揺、また一瞬に見破られている。                 【 小池  光 選 】


 わが死なばわれの心にけざやかに生きゐる夫もともに死ぬらむ
                           秦野市  深石 ヒロ 

自分が死んだら、わが胸の思い人もまたこの世から跡なくなるのだという、もっともの事ながら胸に沁む。                【 岡野 弘彦 選 】


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