目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   論客を千人容れてビヤホール    埼玉市  藤井  恵

巨大なビアホールに人が溢れ、それぞれのテーブルで口角泡を飛ばして議論に熱中している情景。 わんわんとした雰囲気を、「千人の論客」と誇張的に捉えて面白い。                   【 矢島 渚男 選 】


   友の名を見つけてうれし祭寄付    稲城市  山口 佳紀

故郷の祭に来て、寄付欄に、久しく会っていない友の名を見出した。名前を見ただけでも懐かしい。                   【 小澤 實 選 】


   でで虫の今発心の歩速かな    鶴岡市  広瀬  弘

のろのろと進む蝸牛(かたつむり)。その蝸牛にも「発心」というものがある。その時が「今」だというのだ。               【 宇多 喜代子 選 】



   面接官田植えのころのことを聞く   羽曳野市  北山史人

就職試験だろうか。質問事項もなくなって田舎の田植えのことなどを話題にしたのだろう。面接官という人物を素材に取り上げて面白い。 
                               【 矢島 渚男 選 】


   田を植ゑて巌(いわお)の神に一礼す   別府市  河野 靖朗

農作業の始め終りのけじめに、崇拝する何かに頭を下げる。古来、多くの農民が試みてきたことだし詩歌にも詠まれてきた。さりげない行為に祈りの気持ちがよくでている。                  【 宇多 喜代子 選 】



   天道虫みるみる指をのぼりけり   東久留米市  久保 達夫

てんとう虫に指をさし出してみたら、たちまち指を登ってきたのであろう。「みるみる」が生き生きとした表現で、自然を体験に即して捉(とら)えすぐれている。                            【 矢島 渚男 選 】


   きっぱりと五月青山椒を煮る     大津市  福田 由美
  
きっぱりと五月になった。私は青い山椒の葉を煮よう、あるいは煮ている、というのである。ピリッとした青山椒の佃煮は初夏の感触。 【矢島 渚男 選】


 この里は一人が逝けば続くという呟(つぶや)きながら手伝い人行く
                          三重県  長谷川 欣造

高齢の住人が多い里なのだろうか。一人の死が連鎖反応を呼ぶなどとは、迷信とわかっていてもどこか怖い。 歩みゆく「手伝い人」は、もしかして、他界からの使者なのか。                  【 栗木 京子 選 】


   蝶々のとまるこの指老いにけり     秩父市 内田 定男
何かの折に、わが身の些細な老いに気づくことがある。間近に見ることの多い指へのさらっとした深い思い。            【 宇多 喜代子 選 】



   鎌倉や石柔らかき花の寺      野田市 松沢 龍一

優しい情感のあふれた句だ。 何もかもが柔らかく感じる花時、石に注いだ目が生きている。                    【 宇多 喜代子 選 】



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