目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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   地平線傾けて降る夕立かな   八王子市  徳永 松雄

この夕立も壮快。どどどとふる太い雨。雨の直線をおおいに意識した構図が、地平線を傾けるという喩(たとえ)によく描かれている。   
                             【 宇多 喜代子 選 】



    わが憂いきっぱりと断つ瀑布かな   千葉県  菅谷 貞夫
    
轟音(ごうおん)とともに落下する瀑布(ばくふ)。 どこの瀑布であってもいい。滝という日本的な情感を超えたような大きさで迫り来る大滝が、こまごました思念や執着を吹っ飛ばす。壮快。        【 宇多 喜代子 選 】



    梅筵(むしろ)小さな母の美しき   宇都宮市  近  昌夫   

せっせと梅干作りに精を出している母への感謝である。母が老いて小さくなったという表現はよく見かけるが、「小さな母の美しき」と手放しに礼賛したのがよい。                            【 矢島 渚男 選 】


  砂時計おちゆくごとく落日は大佐渡の沖にしづみゆきたり
                          野田市   青木 作郎
        
日本海の落日は美しい。殊に一島にして一国、永い文化伝統と遠流の島としての歴史を持つ佐渡の落日は、芭蕉ならずとも粛然とした思いに引き入れられてゆく。                       【 岡野 弘彦 選 】


  NHKラジオ講座のカセットを処分しましょうと妻のひとこと
                         東京都   吉竹  純
  
むかし一念発起して学習に励んだのであったが、ものになるべくもなかった。  未練が残って捨てきれぬ。こういうとき女性はいつだってリアリスト。男うじうじ。                             【 小池  光 選 】


  身構えず君に開いてもらうため時間をかけて選ぶ封筒 
                          高島市  宮園佳代美

いかにも思い入れがありそうなピンクやハート模様は避けたい。何気なさを演出するための、何気なくはない努力。            【俵 万智 選 】


   竹の子の傾ぐ高さとなりにけり     鶴ヶ島市  江波戸 和之

こういう句の良さを説明するのは難しい。 ただ誰もが一読、ああその通りだな、と思い、なんとなく嬉しくなる句。視線に愛があるのだ。   
                              【 正木 ゆう子 選 】


   しらうをの中まっすぐに管とほる    東京都 望月 清彦

小さな白魚の体内を一本の管(くだ)が真直ぐに通っているという。  
                               【 矢島 渚男 選 】


 読まざりし「魔の山」を老いて病む日々にとどこほりつつ読みをはりけり
                            松戸市  関根 賢人

20世紀文学の傑作。読まねば、読まねばと思いつつ果たせずにきた。老境の病床に読む。しかも「とどこほりつつ」。ひとつの重い課題が終わる。    
                               【 小池  光 選 】


 いつもなら横目で過ぎるデパ地下の列にわたしを並ばせてみる
                         茂原市  中村 多美子 
 
使者の表現をつかった下の句が、おもしろい。わたしを並ばせているのも、もちろん「わたし」ではあるが、別の誰かになって、いつもとは違う変化を楽しむ感じがよく伝わってくる。                   【俵 万智 選 】


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