目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
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 束をなす封書きっぱり刻み捨つ逝きし歌友の四、五通残し  
                       相模原市  大谷 千恵子
 
定期的に処分しないと手紙も溜(た)まるばかり。だが、どうしても捨てられない封書がある。歌友からの手紙であるところが印象的。短歌によって結ばれた絆の深さがわかる。                   【 栗木 京子 選 】


   アウシュビッツへ行く貨車の音か夜は長し   宮脇 白夜 (はくや)

 果てしなくつづく線路の音。ヨーロッパ中から悲しみと絶望を運んでゆく鉄の重い轟(とどろ)き。 貨車に詰めこまれた人々は、その音がいつまでも止まないように祈ったかもしれない。秋の夜更け、作者は時のかなたの貨車の響きに耳を傾けている。                  【 四季 ・ 長谷川 櫂 】


   爆睡といふ幸もあり吾亦紅   門真市  皆木多恵子 

熟睡の上を行く爆睡という言葉もだいぶ耳慣れてきた。吾亦紅(われもこう)の吾亦が「われもまた」とも読めるのも、ちょっとした面白さ。
                              【 正木 ゆう子 選 】


   蜩の本当に泣く声もあらむ   水戸市  中崎 正紀

同じ蝉(せみ)でも、油蝉 ・熊蝉 ・法師蝉と声は様々。 澄んだ声の蜩(ひぐらし)は春蝉とやや似ているが、もっと鋭く哀切である。 あんな声で切々と泣くことができたら、悲しみも癒えるかも。       【 正木 ゆう子 選 】


   かまぼこは青鮫の肉敗戦日   東京都  望月 清彦

アオザメは体長4メートルにも達する大鮫でかまぼこなどの原料になる。敗戦前後のこと、鮫の腹からゲートルを巻いた兵士の足が出てきたという恐ろしい話を聞いたことがあった。この句の唐突な付け合わせから、それを思い出した。作者もきっと同じ話を聞いているのだ。       【 矢島 渚男 選 】


   ゲラ刷(ずり)に汗少々は許されよ   東京都  宮川 広幸

暑い中、必死に校正を行った。校正ゲラに赤ペンで入れた訂正とともに、額から落ちた汗の跡が付いてしまった。 これもまた、努力の証。 印刷工もほほえんで許すだろう。                    【 小澤  實 選 】


   夢ひとつ叶(かな)へて戻れ草の絮(わた)   ふけとしこ

秋草の花は絮となり風の乗って旅立つ。この句、その草の絮に呼びかけているのだろう。しかし、それだけではなく、これから旅立つ人へのはなむけとも聞こえる。人生の新たな旅立ちにこの句を贈られたら、きっとうれしいにちがいない。                          【 四季 ・ 長谷川 櫂 】


   猫じゃらし折れば誰かと遊びたき   東京都  臼木 聡子

ああ、確かにそんな気分になるかもしれない。子供でもいい。猫でもいい。童心に帰る心の幽(かす)かな動きを言い止めて、類想がない。
                             【 正木 ゆう子 選 】


   病院の水母(くらげ)いつしか消えてゐる   芝原 良翁

ときどき通院している人なのであろう。大きな水槽に飼われていて、会うのを楽しみにしていたクラゲ。それが、いつの間にか消えてしまっていた。少し不気味な儚(はかな)さ。                   【 矢島 渚男 選 】


   ヒロシマや影が歩きたがっている     福原 悠貴

今回の投句は、圧倒的に「原爆忌」の句が多かった中での佳吟。 カタカナの「ヒロシマ」は、「ヒロシマ忌」のこと。 原爆の投下で、影だけが道路に残り、肉体は蒸発してしまったことを詠んだ。中七下五の措辞が切ない。       【 角川春樹 選 魂の一行詩(09.09.05)より 】


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