目についた記事を、その時々に書き込むつもりです。
空風や長方形の村役場 埼玉県 小林 光
乾いた空っ風が吹き荒(すさ)ぶ。人家の少ない村の中心にある村役場。四角の建物は、風の中で揺るぐことのない唯一の存在ででもあるかのように見える。頼もしいような、場違いのような長方形だ。 【 宇多 喜代子 選 】
秋の夜の学習机といふ宇宙 金沢市 竹内 繁
本を読み物を書く机は、無限に広がる想像力の入り口である。未来在る子供の学習机ならなおのこと、さまざまな本に囲まれて、スタンドを点(とも)せば、そこは子供だけの宇宙。 【 05.12.26 正木 ゆう子 選 】
本を読み物を書く机は、無限に広がる想像力の入り口である。未来在る子供の学習机ならなおのこと、さまざまな本に囲まれて、スタンドを点(とも)せば、そこは子供だけの宇宙。 【 05.12.26 正木 ゆう子 選 】
八十路すぎてあまりに早き日の流れまたあらたなる年の近づく
東京都 安田 順
正月が来るのが夢のように待ち遠しかった幼年、一日一日が充実して生きることの確かだった中年、それに比べて何という時の経過の早さだろう。それでも新年を迎える心の動きは楽しい。 【 05.12.26 岡野 弘彦 選 】
東京都 安田 順
正月が来るのが夢のように待ち遠しかった幼年、一日一日が充実して生きることの確かだった中年、それに比べて何という時の経過の早さだろう。それでも新年を迎える心の動きは楽しい。 【 05.12.26 岡野 弘彦 選 】
貧しきも富むもおしなべて煌(きらめ)く灯眼下に点せり函館山は
東京都 加藤みさを
作者は函館山を親しい山として眺めているようだ。その山が夜闇の中に在るときの感を歌っているが、住む人のくらしのさまに及んでいて深いものがある。
【05.12.26 田谷 鋭 選 】
東京都 加藤みさを
作者は函館山を親しい山として眺めているようだ。その山が夜闇の中に在るときの感を歌っているが、住む人のくらしのさまに及んでいて深いものがある。
【05.12.26 田谷 鋭 選 】
犬のいた17年や冬の入り 由布市 野上 浩志
立冬を過ぎるとやがて落ち葉の季節。17年間犬とともに踏んだ落ち葉の道を、今年は人間だけで歩く寂しさ。犬よありがとう、という気持ち。
【 正木 ゆう子 選 】
立冬を過ぎるとやがて落ち葉の季節。17年間犬とともに踏んだ落ち葉の道を、今年は人間だけで歩く寂しさ。犬よありがとう、という気持ち。
【 正木 ゆう子 選 】
「おい金魚、俺は寝るぞ」と声掛けて妻入院の孤独に耐える
前橋市 笹村 明
頼みの綱の妻が倒れて同志は鉢の金魚のみ。切なくて深刻、しかしおかしみこもる。深刻な場面にほのかなユーモアを見いだすのが人間の器であろう。正岡子規の如く。 【 小池 光 選 】
前橋市 笹村 明
頼みの綱の妻が倒れて同志は鉢の金魚のみ。切なくて深刻、しかしおかしみこもる。深刻な場面にほのかなユーモアを見いだすのが人間の器であろう。正岡子規の如く。 【 小池 光 選 】
根つこにはお化けがいるね芒原 相模原市 佐藤 光民
芒(すすき)原を獣のようにしなやかな風が走る。 くねくねと形を変える景に「お化け」を確信した。この世の不可思議はみなオバケのせい。芒原の風のゆらぎはたしかに怖い。 【 宇多 喜代子 選 】
芒(すすき)原を獣のようにしなやかな風が走る。 くねくねと形を変える景に「お化け」を確信した。この世の不可思議はみなオバケのせい。芒原の風のゆらぎはたしかに怖い。 【 宇多 喜代子 選 】
喪の酒に酔うて山河の冷えにけり 鶴岡市 広瀬 弘
葬(ほうむ?)りの日か法事の日か。「喪の酒」という言葉はいささか曖昧だが、故人にゆかりの親しい者で酌む酒だ。山河の冷えは、心中の寂しさでもあろう。 【 宇多 喜代子 選 】
葬(ほうむ?)りの日か法事の日か。「喪の酒」という言葉はいささか曖昧だが、故人にゆかりの親しい者で酌む酒だ。山河の冷えは、心中の寂しさでもあろう。 【 宇多 喜代子 選 】
雲を出でて我にともなふ冬の月風や身にしむ雪やつめたき
明恵 ( みょうえ )
山上の房から麓(ふもと)の房へ下ろうとすると、雲に隠れていた月が現れて雪道を照らしてくれた。天上の月も風雪が肌身に堪えているに違いないというのだ。現代人には月は岩石の固まりだが、明恵上人にとっては人と同じ命あるものだった。 【 四季 ・ 長谷川 櫂 】
明恵 ( みょうえ )
山上の房から麓(ふもと)の房へ下ろうとすると、雲に隠れていた月が現れて雪道を照らしてくれた。天上の月も風雪が肌身に堪えているに違いないというのだ。現代人には月は岩石の固まりだが、明恵上人にとっては人と同じ命あるものだった。 【 四季 ・ 長谷川 櫂 】
我もまた次男に生まれ翁(おきな)の忌 川崎市 竪山 道助
芭蕉は次男に生まれ郷里の兄の家を終生助けた。同じ次男に生まれた作者は自分にひきつけて偲(しの)んでいる。 芭蕉(翁)の死は元禄7年10月12日、太陽暦では1694年11月28日のことであった。
【 矢島 渚男 選 】
芭蕉は次男に生まれ郷里の兄の家を終生助けた。同じ次男に生まれた作者は自分にひきつけて偲(しの)んでいる。 芭蕉(翁)の死は元禄7年10月12日、太陽暦では1694年11月28日のことであった。
【 矢島 渚男 選 】